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コリネバクテリウム・ウルセランス感染症とは
人獣共通感染症の一つ
コリネバクテリウム・ウルセランス感染症は犬や猫から人間に感染する人獣共通感染症で、コリネバクテリウム・ウルセランスという細菌によって引き起こされる感染症です。
コリネバクテリウム・ウルセランス菌は環境中や動物の粘膜に存在する細菌で、主に牛や豚などの家畜でみられるものの、犬や猫といったペットにも感染することがあります。
とくに注意すべき点は、一部の株がジフテリア毒素を産生することがあり、ジフテリアに似た症状や、人や動物に深刻な健康被害を及ぼす場合があります。
猫のコリネバクテリウム・ウルセランス感染症は稀
猫のコリネバクテリウム・ウルセランス感染症は稀な病気ですが、感染が確認された場合には人間にも影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。
早期発見と早期治療が重要であり、普段からの予防対策が大切となります。愛猫と飼い主さんの健康を守るために、症状がみられた場合は早めに動物病院を受診しましょう。
コリネバクテリウム・ウルセランス感染症による国内死亡例
厚生労働省の報告(平成30年)によると、2001年から2017年11月末までに国立感染症研究所でコリネバクテリウム・ウルセランス感染症の発生を確認しているものは25例(国立感染症研究所調べ)であり、2016年に福岡県の60代の女性がコリネバクテリウム・ウルセランス感染症による死亡していたことが分かりました。
こちらの女性は屋外で野良猫3匹にエサを与えており、そのうち1匹からコリネバクテリウム・ウルセランスが検出され、この猫から感染したのではないかと報告されています。
コリネバクテリウム・ウルセランスの感染経路
猫がコリネバクテリウム・ウルセランス菌に感染する主な経路は下記となります。
動物同士の接触 | 感染した動物(猫や犬、野生動物など)との接触で感染が広がる |
環境を介した感染 | 汚染された土壌や水、物体(おもちゃや食器など)から感染する |
食事による感染 | 汚染された食品を摂取することで感染する |
猫から人への感染 | 猫から人への感染(人獣共通感染症)も報告がある |
感染経路
人、犬、猫、牛など多くの動物で感染例が確認されています。海外では乳房炎や関節炎にかかった牛の生乳からの感染が主で、最近では犬猫からの感染が見られるようになっています。人から人への感染は非常に稀とされています。
感染した動物との接触で感染するため、触れ合った後は手洗いを行うなど一般的な衛生管理で感染リスクを下げることができます。
多頭飼いに注意
公表されているコリネバクテリウム・ウルセランス感染症例のうち、ほぼ全てが多頭飼いで飼育数も多いという結果となっています。とくに猫の多頭飼いが多く、中には10匹以上飼育、18匹飼育もみられます。飼育していた犬に皮膚炎が発症し、犬が死亡した後に飼い主が発症したケースもあります。
1匹だけが保菌しても人間への感染の可能性があるため、多頭飼いとなると衛生管理が難しくなりますが注意しなければなりません。
コリネバクテリウム・ウルセランス感染症の症状
コリネバクテリウム・ウルセランスに感染した猫の症状は、感染の部位や毒素の有無により異なりますが、基本的にジフテリアと似た症状を示します。
呼吸器感染の場合には熱や元気消失、食欲不振、くしゃみ、鼻水などのような風邪に似た症状を示します。
頸部リンパ節腫脹、皮膚炎、粘膜潰瘍など呼吸器以外への感染例もあり、症状が進んで重篤になると呼吸困難や神経症状により死亡する可能性もあります。
コリネバクテリウム・ウルセランス感染症の予防方法
コリネバクテリウム・ウルセランス感染症を予防するためには、日常的な衛生管理が重要です。
◆猫の生活環境の清潔を保つ
おもちゃや食器の定期的な洗浄を行い、清潔な環境を維持しましょう。
◆感染動物との接触を避ける
感染が疑われる動物と接触させないようにしましょう。
◆定期的な健康チェック
症状がなくても、定期的に動物病院で健康診断を受けることをお勧めします。
◆飼い主さんの衛生管理
人獣共通感染症であるため、猫と接触した後は必ず手を洗い、傷がある場合は適切に処置をしましょう。
まとめ
- コリネバクテリウム・ウルセランス感染症は人獣共通感染症の一つ
- 初期症状は風邪のような症状がみられ、進行すると死亡する恐れもある
- 感染動物との接触を避け、清潔を保つことが予防となる