回虫症(Toxocara)とは
白っぽいミミズのような寄生虫
猫回虫症(Toxocara cati)は、回虫幼虫移行症やトキソカラ症とも呼ばれる人獣共通感染症で、猫を終宿主とする「回虫」という寄生虫によって発症します。
回虫は白色・黄白色のミミズのようなヒモ状の細長い見た目で、体調4~20cm程まで成長します。回虫が生む虫卵は非常に小さく肉眼では確認できません(直径60~75μm)。
猫回虫は世界的に広く分布し、日本でも全国的に発症例が多く確認され、一般的な動物の感染症として知られています。
回虫類の種類
回虫類には猫回虫、犬回虫、クマ回虫、スカンク回虫、アナグマ回虫、タヌキ回虫、パンダ回虫などがあり、主な終宿主としている動物の名前が回虫名となっているようです。犬小回虫の場合は、日本では例が少ないですが、海外輸入の猫に多いと言われています。
猫回虫は、猫を主な終宿主とする種類ですが、他の動物名の回虫であっても、経由する形で他の動物にも感染するので、猫が犬回虫などに感染する場合もありますし、他の動物が猫回虫に感染することもあります。
回虫症の感染経路
糞便に含まれる虫卵の経口摂取
回虫症は、感染動物が排泄した糞便に含まれる幼虫形成卵を口にすることで感染します。成虫は感染動物の消化管に寄生し、糞便中に成虫が確認されることもありますが、目には見えない虫卵が原因であることがほとんどです。
人の場合は、土壌に多く存在しているブタ回虫や、飼い犬・飼い猫から感染する犬回虫や猫回虫が知られています。
虫卵をネズミなどの終宿主以外の動物が摂取した場合、回虫は成虫になることなく、その待機宿主の体内で幼虫のまま留まります。ネズミが猫などに捕食されると、終宿主である猫に感染します。
母猫から子猫への経乳感染
他の感染経路として、猫回虫に感染した母猫の乳汁から子猫に経乳感染する場合があります。乳汁に回虫の幼虫が混入し、ミルクを通じて子猫に回虫が渡ってしまうと子猫にも感染してしまうため、完全室内飼いで育てた場合でも、母猫が回虫に感染していた場合、同じように寄生されている可能性があります。
回虫症の症状
- 下痢
- 脱水
- 削痩
- 発育不良
回虫症に感染した場合、下痢の症状が一般的ですが、成猫の場合はほとんどが無症状です。感染に気付かずに無症状で一生を終える猫もいます。
子猫が感染すると重症化してしまう場合もあり、また脱水症状や、成長途中の猫の場合は発育不良になることも。
回虫症の治療方法
- 駆虫薬(ピランテルパモ酸塩、フェバンテル、ミルベマイシンオキシム、セラメクチンなど)
- 止瀉薬
- 栄養剤
回虫類にはピランテルパモ酸塩やフェバンテル、ミルベマイシンオキシム、セラメクチンなど駆虫薬を投与します。
また猫の症状に合わせて、止瀉薬(下痢止め)や栄養剤も利用します。
市販で売られている駆虫薬もありますが、獣医師の指示に従い、動物病院で処方を受けることをおすすめします。
回虫症の予防方法
感染動物の糞便はすぐに掃除する
回虫は感染動物の糞便から感染します。糞便に含まれる虫卵は卵の内部に幼虫が形成されるまでは、感染能力を持たないので、なるべく速く、適切に処理することで感染を防ぎます。
特に多頭飼いの猫の場合は、トイレを共有することが多く、毛繕いでお互いをなめ合っている時に経口感染することがあるので、駆虫が完了するまでは、トイレや感染猫の隔離が必要です。
完全屋内飼育
猫が屋外に自由に出入りできると、屋外の土壌や他の猫や動物から回虫に感染する可能性があるので、完全屋内飼育は回虫予防に効果的です。
まとめ
- ミミズのような白・黄白色の見た目
- 4~20cmまで成長し、消化管に寄生
- 糞便に含まれる虫卵の摂取、母乳によって感染
- 成猫が感染してもほとんど無症状