キャットフードのビタミンB1(チアミン)。糖質代謝の補酵素、神経伝達物質の合成を助ける

キャットフードの栄養素:ビタミンB1(チアミン)

ビタミンB1は、チアミン(thiamin)やアノイリン(aneurin)とも呼ばれる水溶性ビタミンで、ビタミンB群のひとつとして体内の酵素の働きを助ける「補酵素」の役割があります。

主な供給源には、米ぬか、小麦胚芽、全粒穀類、大豆酵母、緑黄色野菜、肝臓(とくにブタ肝臓)などがありますが、チアミンは化学的に非常に不安定なので、加工の過程で90%程度まで分解され損失してしまうと考えられています。このためキャットフードでは、チアミン塩酸やチアミン硝酸が添加物として配合される場合が多いです。

チアミンの吸収と利用

チアミンは、植物性飼料中では他の物質とは結合せずチアミン単体の形で存在しています。動物性飼料ではリン酸と化合した「リン酸化チアミン」として存在します。

動物性飼料の場合、摂取したリン酸化チアミンは、小腸粘膜酵素の作用によってチアミン単体(遊離)で吸収され、小腸の細胞内で活性型の「チアミンピロリン酸(TPP)」になります。

活性型になったチアミン(チアミンピロリン酸)は、肝門脈を通って肝臓に運ばれ、ほとんどが血中の赤血球に存在し、輸送されます。

猫におけるビタミンB1(チアミン)の働き

糖質代謝の補酵素

ビタミンB1はグルコース(ブドウ糖)からエネルギーを産生するのに欠かせないビタミンです。

小腸の細胞内で活性型となったチアミンピロリン酸(TPP)は、物質代謝の中間体として存在するピルビン酸を「アセチルCoA」という化合物に変え、糖の代謝経路(解糖系)とエネルギーを産生するクエン酸回路(TCA回路)をつなぐ重要な役割を果たします。

また、クエン酸回路(TCA回路)の入部であるα-ケトグルタル酸をスクシニルCoAという化合物へ反応させるためにも必要なビタミンです。

中枢神経や末梢神経の機能を正常に保つ

また、ビタミンB1(チアミン)は、チアミン三リン酸になると、神経伝達物質であるアセチルコリンの合成に関与します。

チアミン三リン酸は、神経伝達物質が貯蔵されているシナプス小胞で、神経刺激を伝達する「アセチルコリン」を化合物の状態から単体の状態(遊離)になる助けとなります。アセチルコリンが遊離することによって、知覚刺激の神経伝達を促す作用があります。

キャットフードに必要なビタミンB1の量・基準

キャットフード チアミン ビタミンB1画像引用元:2016 AAFCO Midyear Meeting Committee Reports

ペットフード公正取引協議会が採用するAAFCOのガイドラインによると、ドライタイプのキャットフードのビタミンKの最低基準は、幼猫用・成猫用ともに5.6mg/kg以上と定められています。

最大値(上限値)の設定はありません。

ビタミンB1の欠乏/過剰摂取

欠乏症

  • 脚気
  • 浮腫
  • 神経炎
  • 筋肉衰弱
  • 神経症
  • 食欲不振
  • 成長抑制

猫におけるビタミンB1欠乏症としては、筋肉衰弱や麻痺をともなう神経症、食欲不振、成長抑制があります。

ビタミンB1欠乏はその摂取不足からだけではなく、抗ビタミンB1因子であるチアミン分解酵素(チアミナーゼ)の過剰摂取によっても生じます。たとえば生のエビやカニには多くのチアミナーゼが含まれることから、ビタミンB1欠乏症を引き起こしやすくなります。

エビやイカ、生魚は加熱処理すればチアミナーゼが壊れるので、与える時は必ず火を通してから与えましょう。

過剰摂取

  • 毒性は低い

経口摂取によるチアミン中毒は報告されていません。水溶性ビタミンは過剰摂取しても排泄されるので過剰摂取が問題になることは少ないです。

まとめ

  • 加工の段階でほとんど分解されてしまう
  • 糖質代謝を助ける
  • 正常な神経伝達を保つ
  • チアミナーゼを多く含む成分を摂取するとビタミンB1欠乏症になる
キャットフード ビタミン

キャットフードのビタミン類。猫の必須ビタミンの種類と働き、欠乏症/過剰摂取の症状を解説

2018年9月25日

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一般社団法人ペットフード協会ペットフード販売士、キャットフード勉強会ディレクターとして、キャットフードに関する情報を提供しています。また、日本化粧品検定協会のコスメコンシェルジュ資格を有し、ペットフードだけでなく化粧品にも精通しています。販売時に必要な知識となる薬機法などについてもご紹介ができます。日本化粧品検定協会会員。