キャットフードの原材料:菜種油・キャノーラオイル
日本の食用油の6割を占める植物油
菜種油は、アブラナ科アブラナ属の「セイヨウアブラナ」を原料につくられた植物性油脂です。菜の花(セイヨウカラシナ)のような黄色い花を付けるので混同されがちですが、セイヨウアブラナとは別の種類で、見た目はよく似ていますが、花の咲き方や花のサイズなど異なります。
菜種油はパーム油、大豆油に次いで世界3番目の生産量となっているメジャーな植物油のひとつで、日本では食用油の全体の6割を占めています。ペットフード、キャットフードにおいても菜種油やキャノーラオイルはメジャーな原材料のひとつです。
- ねこひかり(菜種油)
- たまのカリカリねこまんま(菜種油)
- ハッピーキャット(菜種油)
- アースボーン(キャノーラ油)
- K9ナチュラル(キャノーラ油)
- ソリッドゴールド(キャノーラ油)
- オーブンベイクド(キャノーラ油)
- ウェルネス(キャノーラ油)
- アカナキャットフード(キャノーラ油)
- ナチュラルバランス(キャノーラ油)
菜種油とキャノーラ油の違い
菜種油とキャノーラオイルは、同じくくりで紹介されますが、キャノーラ油は菜種油と同じセイヨウアブラナのキャノーラ種(品種改良)を原料とした植物性油脂なので、厳密には菜種油とキャノーラ油は同じものではありません。
キャノーラ油は、菜種を遺伝子操作することで、上記で危険と言われるエルカ酸とグルコシレートを含まないよう品種改良されています。
国産海外産問わず様々な原産国のフードに使用されている印象ですが、菜種油は主に国産キャットフードで、表記や翻訳の違いかもしれませんが海外産キャットフードのほとんどはキャノーラ油を使用しています。
菜種油・キャノーラオイルの栄養素と猫におけるメリット
菜種油はビタミンEが豊富で、熱に強く酸化しにくい
キャットフードで「酸化」は気になる点のひとつかと思います。基本的に脂質は酸化しやすいので、油脂や脂質の多い食べ物は、熱や空気に触れたりすることで酸化しやすい特徴があります。
ただ、菜種油は熱に強く抗酸化作用のあるビタミンE(100g中15mg)も豊富であることから、他の油脂に比べて酸化しにくい特徴を持っています。
酸化しにくい脂質を使用することで酸化防止剤などの添加物を控えることができるため、油分が多く酸化による食いつきに影響がでやすいキャットフードにおいては特に相性がいいかもしれません。
オレイン酸が豊富
菜種油にはオレイン酸(オメガ9)が豊富に含まれています。
オレイン酸は必須脂肪酸ではありませんが、善玉コレステロールを減少させずに悪玉コレステロール濃度を下げる作用や、動脈硬化、高血圧など生活習慣病の予防効果、また腸の動きを活発にし蠕動運動を活性化される作用で便秘予防効果も期待されています。
菜種油の危険性や注意点
主成分のエルカ酸の危険性
菜種油の主成分であるエルカ酸はオメガ9脂肪酸ですが、長期間接種することで、心筋が脂質代謝障害を引き起こす可能性が指摘されています。
画像引用元:食品安全関係情報詳細|食品安全委員会
ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は6月4日、乳児用調製乳中のエルカ酸(erucic acid)に由来する健康影響に関する意見書(2021年6月4日付け、No. 017/2021)(ドイツ語、PDF版30ページ)を公表した。概要は以下のとおり。エルカ酸は、アブラナ科野菜(セイヨウアブラナ等)及び他の植物の油に富む種子に存在する。即ち、なたね油等の植物油はエルカ酸を含有する。エルカ酸を恒久的に多量摂取すると心臓の可逆性の脂肪変性に繋がる場合がある。このため、欧州食品安全機関(EFSA)は耐容一日摂取量(TDI)を導出した。更に、欧州委員会は、特定の食品(乳児用調製乳及びフォローアップミルクを含む)におけるエルカ酸の最大規準値(Maximum Level)を設定した。
上記はあくまで人への影響についてですが、猫には無関係とも言え切れず、またキャットフードでは同じ毎日一定量を摂取することになるので、菜種油を使用したキャットフードを総合栄養食として毎日与える場合、エルカ酸を恒久的に摂取する可能性は高いと言えます。
菜種油とキャノーラ油の違いにもあるとおり、キャノーラ油はエルカ酸を含まないよう品種改良されているのでエルカ酸は2%以下となっています。
甲状腺機能障害を引き起こす?
また、菜種に多く含まれる二次代謝産物のグルコシノレートには甲状腺機能障害を引き起こす危険性が報告されています。
ただグルコシノレート量は製造過程の加熱工程で減少し、搾油された菜種油にはグルコシノレートは含まれないとされています。
菜種油の抽出にはヘキサンという石油系の溶剤が使用
菜種油の抽出時にはヘキサンという石油系溶剤が使用されます。
- 原料の搬入・選別(ふるい分け)
- 圧ぺん(押しつぶす)
- 蒸し煮
- 圧搾・抽出 ノルマルヘキサン(石油系溶剤)使用
- 脱臭・精製
ペットフードへの積極的な使用は推奨されていない
引用元:ペットフードで使用される主な脂質源原料(後編)|ペット栄養学会誌
(一部抜粋)菜種油はイヌ・ネコへの安全性や過剰症の情報が不足していることが過去に指摘されており、この状況は現在も変わっていないため、ペットフードへの積極的な使用は推奨しない。毒性の可能性としては菜種に高容量含まれるとされるエルカ酸やゴイトロジェンが指摘されることが多いが、NOAELが不明であり、どの程度問題なのかもはっきりしない。
ペット栄養学会誌のペットフード使用される主な脂質源原料の紹介では、菜種油は上記のようにペットフードへの積極的な使用は推奨しないと紹介されています。
まとめ
- 菜種油・キャノーラ油はペットフードではメジャー
- ただペットフードへの使用はあまり推奨されていない
- エルカ酸やグルコシノレートによる危険性が報告
- キャノーラ油はエルカ酸、グルコシレートが含まれないよう品種改良されている