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キャットフードの酸化防止剤:エトキシキン
ゴム固定剤、殺虫剤、農薬や枯葉剤などに利用される合成酸化防止剤
エトキシキン(Ethoxyquin)は、植物成長調整剤や抗酸化剤として使用される合成添加物の一つです。エトキシキンはアメリカのバイオ科学メーカー「モンサイト社(Monsanto Company)」によってゴムの固定剤として開発され、殺虫剤や農薬、除草剤、ベトナム戦争で散布された枯葉剤の酸化防止剤にも使用されました。
また、乾燥魚粉が自然発火しないよう、国際規則によって船舶輸送の魚粉へのエトキシキンの使用が定められています。
アメリカでは酸化防止剤として食品への使用が認められています。海外ではリンゴ、ナシなどの焼け防止剤、殺菌剤にも使用されますし、ペットフードへも使用が可能です。
日本では食品はNG、飼料やペットフードはOK
日本では、エトキシキンは食品はおろか農薬への使用も認められていません。日本では2002年にサントリー社のアスタキサンチンを含む健康食品「サントリー自然のちから」に、輸入原料にエトキシキンが使用されていたことが分かり、商品を回収したという事例もありました。
日本では厳しく使用が禁止されるエトキシキンですが、飼料やペットフードへの使用は認められています。
キャットフードへの使用はBHTとBHAの合計量が150μg以下/g
ただ、無制限に使用していいわけではなく、平成21年施行の「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)」の基準規格等によって、BHTとBHAの合計量がキャットフード1gあたり150μg以下になるよう制限されています。
ただ食品に使用不可にも関わらず動物用飼料やペットフードへの使用はOKとはどういうことかと納得いかない方も多くいるため、現在日本で販売されているペットフードにエトキシキンを使用した製品はほとんど使用されなくなっています。
エトキシキンの発がん性、変異原性、催奇形性のリスクや危険性
エトキシキンの変異原性と催奇形性については、直接的な変異原性や胎児毒性、催奇形性いずれもあるという予想もされています。
1969年の合同会議で、犬の長期混餌投与試験とラットの生殖毒性試験での無毒性量(NOAEL)に基づいて、一日の摂取許容量(ADI)が0~0.06mg/体重(kg)と設定されています。また、犬に対しては11mg/kg完全配合飼料の濃度で安全である可能性が考えられていますが、猫に対しての詳しい研究や報告はありません。
遺伝毒性(変異原性、催奇形性)
エトキシキンの遺伝毒性試験(変異原性)では、in vitro復帰突然変異試験はすべて陰性でしたが、チャイニーズハムスターの卵巣由来細胞及びヒト末梢血リンパ球を用いた染色体異常試験及びマウスリンフォーマTK試験においては陽性と報告されています。
また、マウス骨髄を用いた小核試験及びラット肝臓を用いた不定期DNA合成試験については陰性という結果が出ていますが、幼若ラットの肝臓を用いた小核試験において弱い陽性を示しています。
試験結果を踏まえ、エトキシキンは染色体異常を誘発するものの、DNA(遺伝子)に対して直接損傷を与えて遺伝子突然変異を生じさせる可能性は極めて低いと言えますが、タンパク質への作用を介して間接的に染色体の異常を誘発する可能性があると考えられています。
発がん性
エトキシキンは発がん性についても疑われています。ただラットによる慢性毒性、発がん性併合試験でエトキシキン入りの餌をラットや犬に対して1年以上の長期的な試験を行った結果、ほとんどの試験で発がん性(腫瘍の発生や誘発)は認められませんでした。
しかしラットを用いた30ヶ月間の慢性毒性・発がん性併合試験においては、膀胱への発がん性が示唆されたと報告されています。
ただし検証が不十分であり、多くの試験結果においてエトキシキンの発がん性は認められていないため、発がん性があるとはっきりは言いきれません。
オスのラットに対する強い腎毒性
2013年7月に食品安全委員会や資料調査会が発表したエトキシキンの飼料添加物評価書によれば、エトキシキンによって若いオスのラットの慢性進行性腎症の進行が加速したことが認められ、強い腎毒性があることが報告されています。
試験では18ヶ月間、エトキシキン入りの餌を与えた試験を与えたところ、オスとメス両方のラットに体重抑制が見られました。ところが4及び14週間後、オスのラットには明確な腎乳頭の間質の変性が現れ、24週までに腎皮質の腎盂腎炎を伴う壊死や腎盂の尿路上皮下形成の進行が見られました。
まとめ
- キャットフードの合成酸化防止剤
- 食品には使用不可
- ペットフード安全法で合計量が150μg/gという制限がある
- 発がん性や染色体異常の可能性がある
以上の試験結果や報告などを踏まえ、エトキシキンの危険性はまだ検証が不十分で食品やペットフードへの利用については、懸念点が多いです。
このため、キャットフードでも使用制限はしっかり設定されているものの、エトキシキン入りのキャットフードをおすすめはできません。