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日本では年々猫を飼う人が増え、キャットフードなどの食事や栄養への関心が高まっています。
中でも近年注目されているのが、グリホサートです。グリホサートは除草剤ラウンドアップ(Roundup)などに含まれる主成分の化学物質です。
このグリホサートがキャットフードに混入し、猫の健康に悪影響を与えるのではないかという懸念が高まっています。
今回は、グリホサートがキャットフードに含まれる可能性や猫の健康への影響、そしてグリホサートが混入する背景やそのリスクの対策について解説します。
グリホサート(glyphosate)とは
グリホサートは1970年代にモンサント社(現在はバイエル社)が開発した除草剤で、ラウンドアップは植物のアミノ酸合成を阻害することで雑草を枯らす特徴があります。もともと農業で広く使用されていましたが造園や家庭の庭でも使用され、雑草の管理を効率化しています。
しかし、その広範囲な使用により食品や環境中に残留する可能性があり、これがキャットフードにも混入する懸念を引き起こしています。
グリホサートを摂取すると急性の中毒症状として嘔吐や下痢、倦怠感、食欲不振などが報告されています。さらに長期的に低濃度のグリホサートにさらされた場合、発がんリスクや内分泌系への影響が懸念されます。とくに猫は肝臓の解毒機能が弱いため、化学物質の影響を受けやすいです。
グリホサートがキャットフードに含まれる背景
グリホサートは除草剤なので雑草を枯らすことができますが、遺伝子組み換え食物は枯れないようにグリホサートに耐性を持つように遺伝子操作がされています。
遺伝子組み換え食物は主にトウモロコシや大豆、じゃがいもなどの作物によく使用されています。2011年の調査では、世界で栽培されているトウモロコシの約30%が遺伝子組み換えであるとされています。
多くのキャットフードの原材料にはトウモロコシや小麦、大豆などの農産物が含まれていますが、これらの作物はグリホサートを使用して栽培されている可能性があります。キャットフードの原材料としてグリホサートが残留している農作物を使用した場合、加工を経て完成品のキャットフードにも含まれる可能性はゼロではありません。
グリホサートの安全性は不明瞭
安全性については議論が続いている
2015年、世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)は、グリホサートを「ヒトに対しておそらく発がん性がある」(グループ2A)と分類しました。この発表は農業従事者や消費者の間で不安を引き起こし、グリホサートの使用に対する反発が世界中で広がる一因となりました。しかしその後、欧州食品安全機関(EFSA)や米国環境保護庁(EPA)は、適切に使用された場合、グリホサートのリスクは低いと結論づけています。
このように、グリホサートの安全性については不明瞭で世界的に議論が続いています。
ペットフード安全法による農薬の規制
日本ではペットフード安全法により、農薬の上限値が定められています。
農薬名 | 上限値(ppm) |
---|---|
グリホサート | 15 |
クロルピリホスメチル | 10 |
ピリミホスメチル | 2 |
マラチオン | 10 |
メタミドホス | 0.2 |
食品衛生法によって厳しい規制を持つ食品と比べると、ペットフードにおける管理体制は規制対象とされる農薬の種類が非常に少なく、規制が緩いという印象を持ちます。
ペットフード業界の取り組み
遺伝子組み換え作物を使用しないキャットフード
ペットフード業界では、消費者の安全性に対する懸念を受けていくつかの取り組みが行われています。
その中でもとくに、遺伝子組み換え作物を使用しないキャットフードが注目されています。
人の食品において、遺伝子組み換え作物が使用されている場合はその表示が義務付けられていますが、家畜の飼料やペットフードに関しては表示義務がありません。
このように規則や安全性、リスクが不明瞭であるため、遺伝子組み換え作物を使用しないメーカーやキャットフードも多くあります。こうしたメーカーは、キャットフードのパッケージに遺伝子組み換え食材不使用やGMOフリーと記載していたり、「遺伝子組み換え食物は使用していません」と公式サイトに記載しています。
遺伝子組み換え食材/GMOフリーのキャットフード
- ロニーキャットフード/グレインフリー チキン
- エリザベスキャットフード/グレインフリー サーモン
- フォルミナN&D/グレインフリー
- シシア/アダルトチキン
- アニモンダ/チキン
農薬残留の結果を公開
キャットフードのメーカーの中には、第三者機関による品質検査を実施し、農薬や化学物質の残留を確認している企業もあります。こうした企業はキャットフードのパッケージや公式サイトで詳細な検査結果を公開し、消費者に対して安全性を確保しています。
グリホサートのリスクを回避するための対策
オーガニックのキャットフードを選ぶ
グリホサートは農薬として使用されるため、農産物に残留する可能性があります。しかし有機(オーガニック)栽培の作物は、化学農薬や除草剤の使用が厳しく制限されています。オーガニックのキャットフードを選ぶことで、猫がグリホサートにさらされるリスクを大幅に減らすことができます。
キャットフードを購入するときに、パッケージに「オーガニック」や「有機認証」が記載されていることを確認しましょう。
GMOフリーのキャットフードを選ぶ
遺伝子組み換え作物はグリホサート耐性を持つように設計されているため、その栽培過程でグリホサートが多用されることがあります。
遺伝子組み換え作物不使用(GMOフリー)のキャットフードを選ぶことで、グリホサートとの接触リスクを減らすことができます。
メーカーの品質管理情報を確認する
キャットフードのメーカーが行っている品質管理や検査体制について調べることもおすすめです。信頼できるメーカーは、原材料の調達元や農薬の残留に関する情報を公開していることが多いです。製造元のウェブサイトや製品ラベルに記載されている情報を確認する習慣を持つことがリスクの回避に役立ちます。
手作りごはんに挑戦する
自宅でキャットフードを手作りする方法もあります。これにより使用する材料を完全に管理でき、化学物質や農薬の影響を回避することが可能です。
ただし、猫の栄養バランスを保つためには専門的な知識が必要となるので、獣医師やペット栄養管理士に相談することをおすすめします。
周辺環境にも注意する
キャットフードだけでなく、猫が生活する環境におけるグリホサートの使用にも注意が必要です。家庭の庭や近隣のエリアで除草剤が使用されている場合、猫がそれに触れたり、誤って摂取するリスクがあります。グリホサートが使用された場所に猫が立ち入らないようにし、庭などの環境管理にはオーガニックなものを取り入れることがおすすめです。
まとめ
キャットフードに含まれる可能性のあるグリホサートについてはまだ完全に解明されていない部分も多く、飼い主として慎重になるべき点がいくつかあります。
グリホサートが猫に与える影響を最小限に抑えるためには、オーガニックのキャットフードやGMOフリーのキャットフードを選び、メーカーの品質管理体制を確認することが重要です。また、かかりつけの獣医師に相談することで猫にとって最適な食事を見つける手助けとなるでしょう。