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食肉の代替肉としても注目される培養肉は、科学的で安全性や栄養面で心配という方もいますが、実は非常に安全性が高いのですよ。
今回はペットフードや食品に使用される培養肉についてご紹介していきたいと思います。
ペットフードに使われる培養肉について
近年食品市場において、大豆などの植物肉と共に、動物の細胞を培養してつくられる「培養肉」が食肉の代替肉として注目されています。
ペットフードにおいても、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の調査によれば、全米で総計1億6,300万匹の猫や犬が、ペットフードとして肉を食べており、特に肉食動物である猫が食べるキャットフードには、動物由来の原材料がより多い割合で使用されているので、消費量もかなりのものと予想されています。
アメリカのコロラド州のボンド・ペット・フーズ(Bond Pet Foods)や、シカゴのバイオクラフト社(BioCraft (旧 Because Animals))は、細胞から培養された肉を使用した商品展開に向けて製品の開発を進めており、後者のバイオクラフト社(では、2021年8月から公式サイトでネズミ培養肉を使用した猫用おやつの予約販売が開始され、2022年に一般販売を開始する予定となっています。
培養肉(Cultured meat)とは
動物の可食部の細胞を組織培養して生産する肉
培養肉とは、動物の個体から得られる肉ではなく、動物の可食部の細胞を組織培養して生産される肉で、「クリーンミート(Clean Meat)」とも呼ばれています。
組織培養とは、多細胞生物から細胞を分離し、体外で増殖・維持することです。培養したい家畜動物の細胞を分離して、細胞間液に見立てた液体(培地)の中で人工的に増殖させることで、飼育に必要な穀物や水を必要とせずに多くの肉を得ることができます。
食品では2013年に世界初の培養した牛肉を使用したハンバーガーが誕生して以降、フォアグラ、魚肉、家禽肉など次々と培養によって動物性原料が生み出されています。世界の培養肉市場もここ数年の間にさらに急拡大すると予想されています。
培養肉の生産方法
培養肉でペットフードを生産するボンド・ペット・フーズ社(Bond Pet Foods)やバイオクラフト社(BioCraft (旧 Because Animals))の培養肉の生産方法などを見てみると、それぞれ培養方法が異なります。
ボンド・ペット・フーズ社の培養肉の生産方法
まず、ボンド・ペット・フーズ社では、鶏肉の培養肉を生産しペットフードへの利用を進めています。「インガ」という牧草地のニワトリから組織を採取し、鶏タンパク質の遺伝暗号を抽出、解析します。コートを食品酵母の菌株と結合し、発酵タンクで栄養を供給すると、酵母が肉タンパク質の生産を始めます。
サンプル元となったインがは今でも農場で暮らしています。
バイオクラフト社の培養肉の生産方法
バイオクラフト社では、人道的な方法で動物の細胞を採取し、栄養分を含むタンパク質やミネラル成分、ビタミン、栄養素で満たされたバイオリアクター(生体反応器:生体触媒を用いて生化学反応を行う装置)で培養します。
動物から採取された細胞は、独自開発されたウシ胎児血清(FBS)の代替物の上で培養され、細胞が組織にまで成長すると、肉としてペットフードに使用します。ウシ胎児血清(FBS)を入手するために妊娠中のウシを殺す必要はありません。
どちらも方法は異なりますが、動物に苦痛を与えたり命を奪ったりすることなく、培養肉を生産できる方法を追求し生産を行っています。
培養肉は、動物肉の栄養成分を再現できる
動物性の肉には、動物性タンパク質(必須アミノ酸)などを始め、オメガ6脂肪酸や鉄分、亜鉛、ビタミンA(レチノール)などが豊富に含まれていますが、培養肉はそれらの動物肉に含まれる栄養素を再現しながら増やすことができます。
代替肉として先に登場した植物肉(大豆ミートなど)も選択肢のひとつとなりますが、動物性原料に多く含まれる栄養素は、植物肉だけでは十分に満たすことができません。特に猫は肉食動物で、植物に含まれる成分を体内で必要な栄養素に合成することができないので、肉や魚などの動物原料から栄養を摂る必要があります。
このため、キャットフードでは植物肉よりも培養肉の方がより注目されています。
培養肉は二酸化炭素の排出量を抑え、犠牲となる動物を減らすことができる
現在、私たちが食べている食肉は、家畜動物(豚、鶏、牛など)にエサを与え一定の飼育期間を経て屠殺され、可食部を加工して食肉として販売されます。食肉を得るためには、飼育に必要な大量の穀物や水、また二酸化炭素とメタンが発生することが分かっています。
また、従来の食肉は飼育した分の動物の可食部の肉しか利用することができないため、たくさんの肉を得るためには、その分たくさんの家畜動物の命を犠牲にしなければなりませんでした。
対して培養肉は、可食部の細胞の組織培養で得られるので、飼育にかかる穀物や水、スペースや環境が必要なく、二酸化炭素やメタンの発生を抑え、生産に要するエネルギーも削減しながら、必要な動物性原料を確保できます。
また、たくさんの動物を傷つけることなく、食肉として犠牲となる命を最小限に減らすことができることも大きなメリットの一つです。
培養肉のデメリット
肉の食感や風味の再現
現在、食品で培養し利用されているのはミンチ肉です。このため赤身と脂身が合わさったステーキ肉のようなジューシーな完全な肉はまだ再現されていません。
キャットフードなどを始め、ペットフードでは肉はミンチ肉のように粉砕されて他原材料と混ぜて製造されるので、ミンチ肉でも食感に関しては大きな問題ではありませんが、風味も再現できるのかは疑問です。
動物は肉だけでなく様々な器官によって構成されており、血液やその動物がもつ独特の匂いが嗜好性に関係している可能性もありますが、培養肉の場合、そのようなところまで再現できるかどうかは今後の課題となるのではないでしょうか。
まとめ
- 培養肉は動物の命を犠牲にすることなく生産できる
- 培養元となる動物組織の栄養成分の再現が可能
- 現在培養肉を利用したペットフードの開発が進んでいる
- キャットフードでは植物肉より培養肉がいい