キャットフードの重金属。カドミウムやヒ素による猫の中毒症状。法律対象外の危険な重金属とは?

重金属 キャットフード 問題

キャットフードの重金属問題

重金属とは

重金属(heavy metals)と聞くと危険というイメージが先行されがちですが、それは間違いです。重金属とは一般的に鉄以上の比重をもつ金属の総称で、自然界にも低濃度ですが存在する物質です。モリブデン、鉄、亜鉛、銅、マンガン、コバルト、クロム、セレンなど中にはミネラルとして微量な摂取が必要な重金属もあります。

重金属一覧
・鉄(Fe)カドミウム(Cd)・モリブデン(Mo)
鉛(Pb)水銀(Hg)・タングステン(W)
・金(Au)・亜鉛(Zn)・錫(Sn)
・白金(Pt)ヒ素(As)・ビスマス(Bi)
・銀(Ag)・マンガン(Mn)・ウラン(U)
・銅(Cu)・コバルト(Co)・プルトニウム(Pu)
・クロム(Cr)・ニッケル(Ni)

重金属が危険な理由

重金属が危険と言われる理由は人も猫も同じです。重金属の中には上記で話した微量摂取が必要な重金属もありますが、限度を超えた量を摂取すると中毒症状を引き起こします。

金属の中でも体内に蓄積されやすく強い毒性をもつのが鉛、カドミウム、ヒ素(軽金属)、水銀などです。

重金属によって引き起こされる中毒症状

重金属によって引き起こされる症状は重金属の種類によって違います。下記のような症状が出る可能性があります。

  • 下痢・血便
  • 嘔吐
  • 腹痛
  • ふらつき・ふるえ(痙攣)
  • 視覚障害
  • 骨粗鬆症
  • 喉の痛み
  • 息切れ・呼吸困難
  • 発熱

消化器官障害や神経障害、呼吸障害など様々な中毒症状が引き起こされます。

毎日同じキャットフードを食べる猫への影響

重金属による健康被害は受けやすい

人間の場合、毎日同じ食べ物をひたすら食べ続けるというケースは少ないですが、猫の場合、総合栄養食のキャットフードを毎日食べ続けます。このためキャットフードに多くの重金属が混入していた場合、重金属が猫の体内や臓器に蓄積されやすく中毒症状を引き起こすリスクも高くなります。

人間より症状が出やすい?

さらに猫は体も人間に比べて小さいことから、人よりも重金属の影響は早くから受けてしまう可能性も考えられます。

かつて公害と言われた水銀による水俣病では、工場より垂れ流された水銀が多く含まれた魚を食べ続けたことで重大な問題を引き起こしましたが、その際も人より先に猫たちに異変が見られ、踊っているような様子があった記録が確認されています。

ペットフード安全法で規格されている重金属

重金属の成分規格
(ペットフード安全法)
μg/g
カドミウム1μg/g
3μg/g
砒素15μg/g

このような危険な重金属によって猫に健康被害が出ないよう、ペットフード安全法では、重金属の成分が規格されており、強い毒性を持つカドミウム・鉛・ヒ素にはキャットフードにおける含有量の上限値が決められています。

カドミウム

カドミウムは亜鉛に伴って産出される重金属で、穀類に含まれることが多い重金属です。中毒症状には喉の痛みや呼吸困難、発熱などがあり、骨粗鬆症など骨にも影響を与えると考えられています。

鉛はペンキや壁の塗料などにも含まれる重金属で古くから金属として鍋や化粧品などに利用されてきました。中毒症状では腹痛や嘔吐などの消化器官障害、痙攣や手足の神経麻痺など中枢神経や脳への影響も見られます。

ヒ素

ヒ素は自然界に広く分布し、生物や食品の中にも非常に少量含まれる重金属です。ヒ素には種類があり毒性が強いものもあれば弱いものもあります。毒性の高いヒ素の場合、重篤な胃腸障害や不整脈などの急性毒性症状や、慢性的な呼吸器官の障害や発がん性も確認されています。

水銀に関するペットフードの成分規格、法律はない

ただ、同じく強い毒性を持つ水銀に関してはペットフード安全法で成分規格がされていません。水銀は中枢神経障害や運動失調、視覚障害、感覚麻痺などの中毒症状を引き起こす重金属であり、水俣病が問題になった際に猫にも異変が確認された成分です。

ペットフード安全法の施行の状況 - 環境省画像引用元:ペットフード安全法の施行の状況 – 環境省

環境省が発表している「ペットフード安全法の施行の状況」では、水銀は被害事例の報告がないため成分規格はされていませんが、健康被害の情報や科学的知見の収集および製品の実態調査が継続しながら、管理は徹底すべきという結論が出ています。このため、今後ペットフード安全法の成分規格に水銀が加わることもあるかもしれません。

水銀と海産魚を使用したキャットフード

京都大学の博士論文では、市販のウェットフードには水銀濃度が著しく高い製品も販売されているという研究も発表されています。

ネコ 水銀 ウェットフード画像引用元:ネコにおける重金属類摂取とその影響に関する研究 – 京都大学

このため重金属対策としてこれから注意してみるべきところは、メチル水銀を貯め込みやすい大型の海産魚を使用したキャットフードではないかと考えます。

食品でも過剰摂取は控えるよう勧められている

公害による非常に高濃度な水銀が海産魚に含まれるリスクでいえば現在は非常に低いと言えますが、現在も食品ではマグロの過剰摂取は控えるような記載があります。

特定の水産物を偏食すると有害な水銀の摂りすぎになる可能性があります。マグロ類(マグロ、カジキ)、サメ類、深海魚類、鯨類(鯨、イルカ)などメチル水銀濃度が高い水産物を主菜とする料理を週2回以内(合計で週におおむね100~200g程度以下)にすることをお勧めします。

引用元:魚介類・鯨類の水銀についてのQ&A-日本生活協同組合連合会

このため重金属対策を考えるのであれば、メチル水銀を貯め込みやすい大型の海産魚を使用したキャットフードに注意すべきかと思います。中には水銀の含有量検査を行っているメーカーもあるかと思いますので、マグロやカツオなどの海産魚がメインのキャットフードをよく与えるという方は、水銀に注意して選ぶのが得策かと思います。

キャットフードの重金属問題まとめ

猫田
  • 重金属の過剰摂取や長期間の蓄積は中毒症状を引き起こす
  • ヒ素や鉛、カドミウム、水銀などは強い毒性が確認されている
  • 水銀に関する上限値は現在規格されていない

猫にとってキャットフードに重金属が含まれることが、どのようなリスクや危険性があるのか理解いただけたでしょうか。

鈴木さん
水銀の例をみると、法律だけではカバーしきれていない部分もあることがわかりました。

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一般社団法人ペットフード協会ペットフード販売士、キャットフード勉強会ディレクターとして、キャットフードに関する情報を提供しています。また、日本化粧品検定協会のコスメコンシェルジュ資格を有し、ペットフードだけでなく化粧品にも精通しています。販売時に必要な知識となる薬機法などについてもご紹介ができます。 日本化粧品検定協会会員。