キャットフードの原材料:スピルリナ
スピルリナ(Spirulina)とは
スピルリナ(Spirulina)は、細菌に分類される藻類の生物です。幅0.005~0.008mm、長さ0.3~0.5mmと非常に小さく、濃緑色で螺旋状のバネのような形をしています。
スピルリナは植物と動物がわかれる以前、約30億年前から存在していると言われています。そんな長い間ずっとその姿を変えずに生き続けた生命力の高い生物スピルリナは植物と動物のどちらの特徴も持っています。
スーパーフード、未来食の可能性
引用元:PMC Spirulina in Clinical Practice: Evidence-Based Human Applications
動物と植物両方の側面をもつスピルリナは、様々な栄養を兼ね備えていることからスーパーフードとしても注目を集めています。
NASAの宇宙飛行士の宇宙食や栄養補助食品として利用されたり、将来の食糧不足に向けた「未来食」としての可能性も期待されている食材です。
スピルリナの栄養素
栄養価が高く、様々な栄養を良いところ取りしたスピルリナ。スピルリナがスーパーフードと呼ばれる理由は含まれている栄養が物語っています!
タンパク質 | 57.47g | |
脂質 | 7.72g | |
炭水化物 | 総量 | 23.9g |
糖質 | 3.1g | |
食物繊維 | 3.6g | |
灰分 | 総量 | 6.23g |
ナトリウム | 1,048mg | |
カリウム | 1,363mg | |
カルシウム | 120mg | |
マグネシウム | 195mg | |
ビタミン | βカロテン | 342μg |
水分 | 4.68g | |
カロリー | 100g | 290kcal |
アミノ酸バランスの良いタンパク質が豊富
まず、スピルリナは藻類でありながら全体の半分以上の栄養素がタンパク質で構成されています。スピルリナのタンパク質量は57%、乾燥させて水分をとばすと約60%がタンパク質になります。
また、キャットフードでは動物性タンパク質か植物性タンパク質なのかも気になるところですが、スピルリナに含まれるタンパク質(アミノ酸)は、バランスのとれたアミノ酸構成なので植物性ではありますが、猫が消化しやすい動物性に近いタンパク質と言えます。
肉に豊富な必須脂肪酸が豊富
またスピルリナには脂質も8%程度含まれており、脂質には猫の必須脂肪酸である「γリノレン酸」が豊富に含まれます。
γリノレン酸はオメガ6脂肪酸と呼ばれる不飽和脂肪酸で、肉類に豊富に含まれています。スピルリナは藻類ですがここでも動物性食材に豊富な栄養素が含まれています。
緑黄色野菜に代表されるβカロテンも豊富
さらにスピルリナにはβカロテンも豊富に含まれています。猫はβカロテンをビタミンAに変えて利用することができませんが、βカロテンのままでも優れた抗酸化作用などの働きがあります。
βカロテンは緑黄色野菜に豊富に含まれる栄養素なので、まさにスピルリナは植物と動物の両方の栄養素を併せ持っていると言えます。
他にもスピルリナにはビタミンやミネラルが豊富に含まれており、その量も非常に多いことがわかります。
スピルリナをキャットフードにつかうメリット
タンパク質(アミノ酸)が摂れる
スピルリナには動物性に近いタンパク質が豊富に含まれるため、猫に必要なアミノ酸の摂取にも効果的です。
またスピルリナの脂質は8g程度と、肉類や魚類より高いタンパク質量が含まれながら低脂質です。猫に必要なタンパク質を摂取しつつ脂質をここまで抑えられる食材は非常に珍しいです。
消化吸収率が高い
スピルリナは細胞膜が薄いため消化吸収率が高く、エネルギー源や体内で栄養として利用されやすいメリットがあります。
食物の中には体内で成分合成や分解が必要な成分も多くあります。スピルリナの場合、体内ですぐに利用できる形になった栄養素が多く、生体内で消化吸収されやすい栄養が豊富に含まれています。
様々な栄養素を摂取できる
スピルリナは、一つの原材料からタンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルと様々な栄養素を摂取できるため、キャットフードの原材料調達や生産面から見ても可能性が期待される原材料と言えます。
スピルリナをキャットフードにつかうデメリット
肝毒性があるミクロシスチン
スピルリナの中には、強い肝毒性がある「ミクロシスチン」が含まれていることがあります。ミクロシスチンとは「シアノトキシン」という毒素で、ミクロシスチンを含む水を飲んだ人や家畜に中毒症状が出た例が確認されています。
また、中国のスピルリナを使用した食品36の試料中34の食品からミクロシスチンが検出されたと報告されています。
スピルリナ健康食品中のミクロシスチンRR、ミクロシスチンYR、ミクロシスチンLRの微量検出に適したクリーンアップ法を開発した。スピルリナ健康食品の水性メタノール抽出液のクリーンアップには逆相ODSカートリッジを用いた。同クリーンアップ法とLC-MS/MSを用い、中国のラン藻類スピルリナ食品36試料のミクロシスチンを分析した結果,34試料からミクロシスチンを検出した。ミクロシスチン含量は2~163ng/gの範囲にあった。ミクロシスチンRRが94.4%の試料に、ミクロシスチンLRが30.6%の試料に、ミクロシスチンYRが27.8%の試料に存在した。
ただミクロシスチンは紫外線に当てることで無毒なミクロシスチンに変わるとされています(アオコ中の毒性物質ミクロシスチンの紫外線による構造変化に関する研究)。
検査や培養方法によっては毒性のないスピルリナを培養・生産することも可能だと言えるので、一概にすべてのスピルリナ食品が危険とも言い切れません。
重金属 (水銀、カドミウム、鉛、ヒ素)が含まれる可能性
スピルリナは湖などで培養され生産されるため、水銀やカドミウム、鉛、ヒ素などの重金属が含まれる可能性があります。重金属は体内に蓄積され中毒症状を引き起こす危険な物質です。
入手可能な研究結果によると、スピルリナは低用量(成人で1日数グラムまで)では健康リスクはないと考えられる。しかし、個々の過敏症のような稀な有害作用を証明するには入手可能な疫学研究の症例数が少なすぎる。更に、スピルリナを含む食品は、シアノトキシン(主にミクロシスチン)、細菌、又は重金属類(鉛、水銀、ヒ素)によって汚染される可能性がある。
引用元:食品安全委員会 ANSES 食品安全関係情報詳細
スピルリナは低用量であれば健康に問題はありませんが、重金属やミクロシスチンのリスクも考えられることから、大量に摂取するべきではないという見解が多い印象です。
キャットフードのスピルリナのまとめ
キャットフードのスピルリナについてお話してきました。スピルリナについて簡単に復習しましょう。
- 未来食としても注目されているスーパーフード
- 動物性と植物性の食べ物両方の栄養素を併せ持つ
- 動物性に近いタンパク質が大半を占める
- 少量であれば問題ないが検査していないスピルリナの大量摂取は危険