キャットフードの成分:メチオニン(Methionine)
メチオニンとは
メチオニン(methionine)は猫の必須アミノ酸の一つです。硫黄原子(S)を含んだ疎水性の含硫アミノ酸で、植物や微生物はメチオニンを、アスパラギン酸とシステインというアミノ酸から合成することができますが、猫や哺乳動物はメチオニンを体内では合成できないので食べ物から摂取しなければなりません。
肉や魚、卵など動物性食品を始め、グルテンが豊富な小麦やトウモロコシ、豆類など植物性食品にも含まれています。
- 鶏肉
- 牛肉
- ラム肉
- 赤身魚
- 乳製品
- 豆類
- ナッツ
- 小麦
DL-メチオニンとは
キャットフードの原材料として配合されるメチオニンは「DL-メチオニン」と表記されていることが多いかと思います。これはD体メチオニンとL体メチオニンの2種類のメチオニン両方が含まれているという意味です。
aアミノ酸は基本的にD型とL型の2種類があり、基本的に天然のアミノ酸はすべてL型で構成されており、多くはL型アミノ酸が添加されますが、メチオニンの場合、犬猫においてL-メチオニンと同様の働きがあることが報告されているため、ドライフードではメチオニンのみD体とL体が混ざった「DL-メチオニン」がアミノ酸調整や下部尿路疾患対策を目的に使用されています。
メチオニンの様々な働きと作用
メチオニンに肝臓機能の維持や筋肉合成の促進、被毛の構成、またアレルギー症状の緩和など様々な機能や働きに関与しています。
- 肝臓の毒素や老廃物を排出
- 血中コレステロールを減少
- 脂肪肝の予防する
- アレルギー症状の緩和
- セレンを運搬し抗酸化作用を高める
- 筋肉合成を促進する
- 健康な皮膚や被毛の維持する
キャットフードに必要なメチオニン量
充足率が最も低いアミノ酸
メチオニンは様々な原材料を使用する食事では、必要量に対して最も充足率の低い「第一制限アミノ酸」になりやすいため、他のアミノ酸の利用率を高めるためにもメチオニンが十分に摂取する必要がありますが、メチオニンは過剰摂取も問題上限値も設定されており、必要量を過不足なく摂取できるようにキャットフード(総合栄養食)などを利用するのがおすすめです。
ドライタイプのキャットフードのメチオニン量はAAFCOの栄養基準によると、成長期の猫で0.62%~1.5%、成猫で0.2%~1.5%と記載されています。
また、メチオニンを構成するシステインというアミノ酸も、成長期の猫には1.1%以上、成猫以上の猫には0.4%以上が必要とされています。
キャットフードでは基本的に細かいアミノ酸量の記載はありません。正確な成分値は確認できませんが、少なくとも総合栄養食のキャットフードであれば、この最低値と上限値の範囲内の量が含まれるので、過不足なくメチオニンを摂取することができます。
猫のメチオニン欠乏症
猫は成長期におけるメチオニンの要求量が高いため、若い猫に手作り食等をメインに与えているとメチオニンが欠乏症になりやすくなります。
- 発育不全
- 粘膜部分の皮膚の炎症
- 被毛の毛艶や毛並みが悪くなる
猫のメチオニンの過剰摂取
毒性や障害を持つことがある
メチオニンの過剰摂取では発育不全や溶血性貧血が確認されており、成猫で2g/1日で軽度のハインツ小体溶血性貧血が、子猫の場合は1.8%含むフードで食欲の低下と発育鈍化が報告されています。
- ハインツ小体溶血性貧血
- 食欲の低下
- 体重減少や成長不全
メチオニン添加による尿の酸性化と有害性
メチオニンは過剰に摂取すると、代謝経路上で活性酸素の発生や他のアミノ酸のインバランスによる過剰消費を招き毒性や障害を持つことがあるので、過剰なメチオニンは特に低タンパク質のキャットフードでは用いてはならず、シスチンとのバランスを考慮しなければなりません。
また、ペット栄養学会誌では、尿酸性化剤としてのメチオニンの有効性と副作用を調べた実験において、メチオニンの添加によって尿のpHとストルバイト結晶の減少などの効果が確認されましたが、メチオニン6%の食事を与えると食物摂取量や体重が減少し、窒素保持の低下が見られたことから、メチオニンの毒性が示唆されました。
※ただしメチオニン6%というのは非常に多い値です。下記で紹介するAAFCOが設定するキャットフードの上限値を大幅に超えた割合なので、一般的なドライキャットフードでここまでメチオニンが多いキャットフードはほとんどないと思われます。サプリメントなどでメチオニンを通常より多く与えてしまっている方は注意しましょう
まとめ
- メチオニンは必須アミノ酸
- キャットフードではDL-メチオニンと記載されることが多い
- 要求量に対して充足度が低い(制限アミノ酸になりやすい)
- 過剰摂取は毒性や障害を持つことがある