目次
βカロテンは植物の赤橙色の色素
βカロテンはビタミンAの前駆体
ニンジンやカボチャ、ホウレン草などの緑黄色野菜に豊富に含まれる「βカロテン」。
βカロテンはビタミンAを同じ役割を果たすビタミンAの前段階の成分であり、人間や犬がβカロテンを摂取すると、小腸の吸収上皮細胞、あるいは肝臓や腎臓にある酵素で分解して「プロビタミンA(ビタミンA前駆体)」に変換されます。このため犬や人の栄養計算ではβカロテンもビタミンA(レチノール)相当量に加えられます。
猫はβカロテンをビタミンAとして利用できない
猫はβカロテンをビタミンAに変換できない
ところが猫の場合、βカロテンを摂取しても体内でプロビタミンAに変換できません。
このため、βカロテンをビタミンAとして計算することはできず、ビタミンAは始めからビタミンAの形で存在するものを摂取する必要があります。
βカロテンを変換する必要がなかった肉食動物
猫がβカロテンをビタミンAに変換する酵素を体内に持っていません。
これは古くから猫が肉や魚を主食としてきた肉食性の動物であることが影響していると考えられています。
肉や魚の臓器にはビタミンA(レチノール)が豊富に含まれています。猫にとっては主食の肉や魚を食べていればビタミンAを十分に補えるので、わざわざ植物に含まれるβカロテンをビタミンAに変換する必要がなく、このため猫はβカロテンからビタミンAに変更する酵素を持っていないと言われています。
猫はビタミンAの作用を得るにはレチノールが必要
猫にはβカロテンをビタミンAに変換する能力はありませんが、猫にとってもビタミンAは必要な栄養素の一つなので、猫はビタミンAの必要摂取量をレチノールの状態で摂取しなければなりません。レチノールは動物の肉やレバー(臓器)等に豊富に含まれているので、猫にとって肉原料が多い食事が望ましいと言えます。
ビタミンAが多い食べ物
- 肉
- 乳脂
- 肝油
- 鶏卵
- 肝臓(レバー)
- 魚
ただし、ビタミンAは加熱に弱く保存期間が長くなると酸化によっても失われるため、キャットフードに加工される場合は、足りない分のビタミンAを栄養添加物で補うことも多いです。
ビタミンAの働きと効果
猫にも必要不可欠なビタミンAは、体内でどのような働きを担っているのでしょうか。
- 正常な視覚を維持
- 健康な粘膜の維持
- 細胞分化を助ける
- 骨の代謝を助ける
ビタミンAは「ロドプシン」という光を感じるために必要な物質の合成に必要不可欠な栄養素です。ビタミンAが欠乏すると光を取り込めなくなるため、猫が得意な暗闇での視覚や活動に影響が出ます。また、健康な粘膜の維持や細胞分化、骨の代謝の維持など、ビタミンAは様々な体の機能を正常に維持するために必要な成分です。
妊娠猫や子猫はビタミンA必要量が増加する
妊娠期、子猫~成長期の猫は通常より多くのビタミンAが必要になります。ビタミンAの作用の一つである細胞分化は子猫の成長に必要不可欠で必要量も増加するため、母猫および子猫~成長期の猫向けのキャットフードはビタミンAが多めに配合されています。
AAFCOの栄養基準でも、成猫のビタミンAの最低基準は3332IU/kgなのに対し、幼猫のビタミンAの最低基準は6668IU/kgと最低基準が倍以上も違います。
βカロテンもそのままの形で効果や作用がある
最後に、猫はβカロテンをビタミンAに変換することができませんが、βカロテン自身がそのままの形で様々な効果や作用があります。
- 抗酸化作用
- 生活習慣病の予防(心臓秒や癌の予防)
- 免疫活動を活発化させる
- 筋肉損傷を抑える
このため猫にとってβカロテンが意味のないものというわけではありません。
猫のビタミンAとβカロテンのまとめ
今回のβカロテンとビタミンAのように、猫には他にも肉から摂取した「形」の栄養素しか利用性が高くないということが結構あります。植物性原料で成分表の数値では十分なように見える栄養素も、実は植物性の占める部分が多く、猫にとっては利用性の低い形の栄養素で配合されているかもしれません。
このためキャットフードを選ぶ際には、成分表の数値だけで判断するのではなく、原材料名欄を見比べて栄養素がどんな原材料によって補われているかを予測することが大切になってきます。