クリプトスポリジウム症とは
クリプトスポリジウム症(Cryptosporidium spp)とは、消化管の細胞内に寄生するアピコンプレックス門の原生生物(コクシジウム)によって引き起こされる感染症です。
画像引用元:クリプトスポリジウム症とは|国立感染症研究所
従来は牛や豚、犬、猫、ネズミなどの哺乳動物の腸管寄生原虫として知られてきましたが、1976年にはじめて人への感染が報告され、人獣共通感染症として認識されるようになりました。
また、1980年代には後天性免疫不全症候群(AIDS)での致死性下痢症の病原体として注目されました。その頃、日本も含め、世界中で水汚染や食品によるクリプトスポリジウム症の集団感染が報告され、健常者においても水様下痢症などの症状が出ることが明らかとなりました。
クリプトスポリジウムを保有する飼い猫から人へ感染する可能性もありますが、集団感染を除けば日本や先進国での発症例はきわめて少ないとされています。
感染経路・原因
クリプトスポリジウムは、宿主の小腸で生殖を繰り返したあと、休止状態となるオーシスト(胞嚢体)を形成し、糞便中に排泄された、そを動物が摂食することで感染が成立します。
飼い猫がクリプトスポリジウムに感染している場合、一緒に暮らし糞便処理をしている飼い主さんに感染する可能性があります。
症状・致死率
クリプトスポリジウム症の代表的な症状は下痢ですが、感染しても無症状であることが多いです。
ただ免疫機能が低下していたり、免疫不全の基礎疾患のある猫白血病などを患っている場合には、下痢や血便などの消化器障害を発症し重症化しやすいことがわかっています。
クリプトスポリジウムの診断方法
クリプトスポリジウム症の診断は、糞便検査でオーシストの検出で行いますが、クリプトスポリジウムのオーシストは4~5μmと非常に小さいため、顕微鏡だけではなく、蔗糖液浮遊法によりオーシストを検出し、さらにそれを染色(メチレンブルー染色、ギムザ染色、ヨード染色など)して確認する必要があります。
治療方法
免疫機能が正常な動物では自然治癒ことが大半なので、治療を必要としないことも多いです。
免疫機能が低下している場合にはその改善を図りますが、現在のところ、クリプトスポリジウムの駆除に有効な薬物はほとんど知られていません。最近、人間では「アジスロマイシン」という薬が有効と言われているので、今後動物にも応用されるかもしれません。
予防方法
クリプトスポリジウム症の予防としては、食事や給水の際にクリプトスポリジウムのオーシストによる汚染を防止するため、食物と食器を丁寧に洗浄をします。
また、クリプトスポリジウムは他のコクシジウムと異なり、オーシストが外界で発育することなく、すでに感染能力を持っています。このため、飼い猫が感染を受けた場合は、糞便の処理に細心の注意を払いましょう。
まとめ
- 消化管の細胞内に寄生する原生生物が原因
- 水の汚染や食品、飼い猫からの経口感染
- 免疫不全の人や猫は注意