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サイベリアン(siberian)の誕生・起源
ロシアの極寒を耐え抜いた猫種
サイベリアンはロシアのシベリア地方を原産とする自然発生種の猫で、その歴史は数百年以上前にさかのぼるとされています。
厳しい寒冷地に適応しながら進化したサイベリアンは、極寒の気候に耐えられるように、密度の高いトリプルコート(3層構造の被毛)を持っています。この被毛は水を弾き、寒さから身を守るのに役立ちました。
ロシアでは古くから森林地帯や農村部で見られる猫といわれ、農作物を狙う害獣の駆除に貢献しながら人々と共存してきました。また、シベリアの修道院ではネズミ対策として飼育されていたという記録もあります。このように、長年にわたりロシアの自然環境の中で生き抜いてきたため、強い筋肉質の体格と、高い知能、忍耐強い性格を持つようになりました。
サイベリアンが国際的に認知されるようになったのは1980年代後半から1990年代。ロシアがソビエト連邦として閉鎖的だった時代は、国外にほとんど知られることがありませんでした。しかし、ソ連崩壊後に国際交流が増え、ヨーロッパやアメリカへと輸出されるようになりました。1990年にはアメリカに初めて輸入され、その後TICAやCFAなどの主要な登録団体に認められるようになりました。
シベリアキャットとも呼ばれる
現在、サイベリアンはその豪華な被毛と賢さ、そして愛情深い性格で世界中の愛猫家に人気を集めています。
サイベリアンの正式な英語名は「Siberian」ですが、日本ではシベリア猫やシベリアキャットと呼ばれることもあります。
サイベリアンは低アレルゲン猫?

猫アレルギーの方でも飼いやすいと言われる
サイベリアンは、猫アレルギーを持っている人にも比較的飼いやすい猫種「低アレルゲン猫」として広く注目されています。
低アレルゲン猫とは、猫アレルギーの原因となる「Fel d 1」というアレルゲンタンパク質の分泌量が少ない猫種のことを指します。Fel d 1は猫の唾液や皮脂腺から分泌され、毛づくろいによって被毛やフケに付着し、空気中に拡散されます。猫アレルギーの人の約90%は、このFel d 1が原因とされています。
研究によると、サイベリアンのFel d 1レベルは他の猫種に比べて約50~90%低いと報告されています。
ただし、科学的根拠が十分でない
ただし、これらの研究はまだ初期段階であり、科学的根拠が十分でないとの指摘もあります。
完全にアレルギーを引き起こさないわけではないため、猫アレルギーをお持ちの方は慎重に対応しなければなりません。初めてサイベリアンをお迎えする際は、事前に直接触れ合ってアレルギー反応を確認することが推奨されます。
参考:Polymorphism Analysis of Ch1 and Ch2 Genes in the Siberian Cat
サイベリアンの性格

人懐っこく社交的
サイベリアンは人懐っこく、社交的な性格をしているため、飼い主の後をついて回ることもあります。家族と一緒に過ごす時間や抱っこを楽しみますが、ベタベタしすぎるわけではなく、程よい距離感を保つ猫でもあります。
ただし、強い絆を持つ分、長時間の留守番は苦手な傾向があります。独りぼっちの時間が長すぎると寂しさからストレスを感じることがあるため、たくさん遊んであげたり、他のペットと一緒に飼うのもおすすめです。
賢く、学習能力が高い
賢く学習能力が高いため、しつけもしやすい傾向があります。ドアを開けたり、取っ手を使って引き出しを開けるなどの知能的な行動を見せることもあります。
ロシアの寒冷地で長年生き抜いてきたことから自立心が強く、環境の変化にも適応しやすいでしょう。
活発的で、水好き
活発で運動好きな一面もあり、キャットタワーを登ったり、高い場所からジャンプするのが得意です。
また、猫には珍しく水を怖がらないのも特徴的で、水遊びをしたり泳ぐ姿が見られることもあります。これはサイベリアンのトリプルコート(3層構造の被毛)が水を弾く性質があり、濡れてもあまり不快に感じないため水に対する抵抗感が少ないのではと考えられます。
サイベリアンの毛色・模様

多種多様な毛色
サイベリアンは、非常に多様な毛色と模様を持つ猫種です。ほぼすべての毛色が認められており、単色(ソリッド)から、キャリコやパーティーなど複雑なパターンのものまで幅広く存在します。
- ホワイト:純白で優雅な印象
- ブラック:深みのある黒色
- クリーム:淡いベージュのような色
- ブルー:青みがかった灰色の毛並み
- レッド:オレンジ系の明るい色
- シルバー:白っぽい銀色がかった毛色
- ゴールデン:金色がかった輝くような色合い
個体ごとに違った模様を持つ
サイベリアンはその豊かな毛色と模様のバリエーションにより、個体ごとに違った美しさを持つのが魅力です。
- バイカラー:白と他の色が組み合わさった模様
- タビー(縞模様):最も一般的で人気の模様
- トーティ(サビ柄):ブラックやレッドがまだらに混ざった模様
- ポイントカラー:顔・耳・足・尾の先端が濃くなるシャム猫のような特徴
サイベリアンの顔・体型

顔の特徴
サイベリアンは丸みのある輪郭で、やや短めの鼻と少しふっくらとした頬が特徴的です。全体的に柔らかく優しい雰囲気があります。
大きめのアーモンド型の目を持ち、目の色はグリーンやゴールドが多いですが、ブルーやオッドアイの子もいます。
耳は中くらいのサイズで、寒冷地での適応のため内側に長い毛が生えています。耳先に生えている長い毛(飾り毛)を「リンクスティップ」といい、音を集めやすくする効果があると言われています。
体型の特徴
体型は太くしっかりした骨格と、大きな丸い足を持ち、後ろ脚が前脚よりわずかに長いのが特徴です。足の裏には寒さから守るための長い毛(つま先の飾り毛)が生えています。長くてふさふさの尾を持ち、寒い地域では尾を体に巻き付けて暖を取ることもあります。
サイベリアンの体型タイプは、CFAでは「ロング&サブスタンシャル」、TICAでは「セミコビー」に分類されています。
ちなみに、猫の体型タイプは、同じ猫種であっても血統登録団体によって異なる分類がされることがあります。それは、血統登録団体CFAやTICA、FIFeが猫の骨格や筋肉の付き方をどう評価するかに違いがあるためです。
サイベリアンの飼い方・飼いやすさ

安全でストレスがない生活を送るために、サイベリアンの飼い方を把握しましょう。
生活環境
サイベリアンは活発で運動量が多いので、広めのスペースと高い場所に登れる環境を整えてあげましょう。とくに高い場所が好きであるため、キャットタワーやキャットウォークを設置するとストレスや運動不足を解消できたり、満足感を得ることができます。
また、寒冷地出身のため暑さに弱いので、夏場はエアコンや冷却マットを活用し、温度管理を徹底しましょう。
さらに、サイベリアンは飼い主さんとの触れ合いを大切にする猫種なので、長時間の留守番が続くと寂しがることがあります。寂しさやストレスを和らげるために、おもちゃや知育トイを用意するのもおすすめです。
ブラッシング
サイベリアンはトリプルコートと呼ばれる厚みのある被毛を持っており、冬毛はとても密度が高くなります。そのため、2日に1回程度のブラッシングが推奨されます。
とくに、サイベリアンのような長毛種は毛球症に気を付けなければなりません。
毛球症とは、猫が毛づくろいの際に飲み込んだ毛が胃や腸に溜まり、消化管に影響を与える状態です。通常、毛は便とともに排出されますが、大量に溜まると嘔吐や便秘を引き起こします。特に長毛種の猫は発症しやすいです。
毛球症の予防は、こまめなブラッシングによって抜け毛を減らすことです。毛が絡まりやすい首周りやお腹は、とくに丁寧にケアしてあげましょう。
食事管理
サイベリアンは運動量が多く食欲が旺盛な猫種でもあるため、食べすぎによる肥満に気を付けなければなりません。
また、毛づくろいで飲み込んだ毛の排出を助ける毛玉ケア用フードや、消化をサポートするウェットフードやおやつ、サプリメント、猫草を取り入れるのもおすすめです。
遊び
サイベリアンは好奇心旺盛で運動好きな猫なので、毎日しっかり遊んであげることが必要です。特に、高いところへ登れる遊びや、飛び跳ねる動きのあるおもちゃ(猫じゃらし・ボール)を使った遊びが効果的です。
また、サイベリアンは水に興味を持つことが多い猫種なので、水を使ったおもちゃを試してみるのも面白いかもしれません。運動不足になるとストレスが溜まり、肥満のリスクも高まるため、毎日15~30分程度の遊び時間を確保すると良いでしょう。
初心者でも飼いやすい?
サイベリアンは穏やかで人懐っこい性格で、賢いためしつけもしやすく、寒冷地原産のため体が強いことから初心者でも比較的飼いやすい猫種ですが、いくつかの注意点があります。
長毛種のため、被毛のケアが必要
- 抜け毛が多いため、こまめなブラッシングが必要
- 換毛期(春・秋)は特に抜け毛が多くなるため、掃除の手間が増える
活発なため、運動量が必要
- 運動や遊びの時間をしっかり確保する必要がある
- 放置しすぎるとストレスがたまり、問題行動につながる恐れがある
食事管理が重要
- 太りやすい体質のため、適切な食事管理が必要
- 肥満になると関節や骨に大きな負担となる恐れがある
被毛のケアをしっかり行い、たくさん遊んであげられる人であれば、猫と生活するのが初めての人でも良い家族・パートナーになれるでしょう。
サイベリアンのかかりやすい病気

猫種に限らず、猫は猫下部尿路疾患や肥大型心筋症、歯周病にかかりやすい傾向にあります。ここでは、これらの病気以外でサイベリアンがかかりやすい病気をご紹介します。
肥満
サイベリアンは体が大きく、食欲旺盛な猫種です。そのため、運動不足や食べすぎによって肥満になりやすい傾向があります。肥満になると糖尿病や関節疾患のリスクも高まるため、適切な食事管理と運動が重要です。
関節疾患
大型猫であるため、関節に負担がかかりやすく、関節炎や股関節形成不全を発症する恐れがあります。 特に高齢になると関節炎のリスクが増すため、体重管理や適度な運動を心がけることが大切です。
サイベリアンの価格

サイベリアンの価格は平均20万~50万円程度ですが、血統や毛色、購入先によって異なります。
特に、ゴールデンやシルバーなどの希少な毛色や、ショーキャット血統の場合、価格が高くなる傾向があります。
まとめ
- ロシア原産の長毛種で、筋肉質な体と賢く愛情深い性格が特徴
- Fel d 1の分泌量が少なく、低アレルゲン猫種として注目される
- 定期的なブラッシングにより毛球症を予防できる
- 運動が必要で、活発な性格を満たす環境づくりが重要
- 健康で丈夫な体質を持つが、肥満に注意が必要