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キャットフードの原材料:パーム油(palm oil)
世界で最も生産・輸出されている
パーム油とはアブラヤシ(オイルパーム)の果肉から抽出される植物油です。生産国は高温多湿な気候と十分な日照時間があるインドネシアやマレーシアで、世界で最も生産・輸出されています。アブラヤシは通年で実をつけ、単位面積あたりの収穫量が多いため、菜種油や大豆油と比べて約10倍の生産が可能となっています。
日本においては菜種油に次ぐ主要な植物油(全体の27%)で、アイスやマーガリン、化粧品、石鹸、歯磨き粉など私たちのあらゆる食品や日用品に使用されています。
汎用性が高い
パーム油は、食品から非食品まであらゆるものに利用ができるほど汎用性が高い油です。
一般的に、菜種油や大豆油といった植物性油脂は固まりにくい不飽和脂肪酸(リノール酸やα-リノレン酸)を多く含み、動物性油脂は固まりにくい飽和脂肪酸(パルミチン酸)を多く含みます。
しかしパーム油は不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の両方をバランスよく含むため、不飽和脂肪酸を減らせば個体のパーム油、飽和脂肪酸を減らせば液体のパーム油といった、溶ける温度が異なるパーム油を作ることができるなど製品や用途に合わせて割合を調整することができます。
パーム油の生産における問題
パーム油の生産過程における環境負荷や人権問題などに懸念点があることも指摘されています。後述でご紹介します。
パーム油生産における環境問題や人権問題
パーム油自体には猫にとって有害であると断定する成分は含まれておらず、品質維持とコスト削減に役立っています。しかしパーム油は生産における環境問題や人権問題への影響が指摘されており、持続可能な生産方法の採用や、他の油脂への代替が求められています。
◆森林破壊
パーム油の消費と生産は世界的に見ても年々増加傾向にあり、それに伴いインドネシアやマレーシアなどの熱帯雨林が大規模に伐採され、アブラヤシ農園が次々に建設されています。それにより、わずか50年ほどの間で40%の熱帯雨林が消滅したといわれています。
今後さらに世界の人口が増え続けてパーム油の需要も増加すると考えると、さらに森林破壊が進んでしまう危機的状況といえます。
◆森林火災
アブラヤシ農園の開発における大規模な森林火災も問題になっており、その膨大な量の煙による近隣諸国の人々や野生動物への健康被害に大きな影響を与えています。
◆野生動物への影響
森林破壊や森林火災により豊かな生態系が破壊されることにより、すみかを奪われた野生動物が絶滅の危機に瀕しています。希少動物のボルネオゾウやオランウータンなども行き場を失い、住宅地やアブラヤシ農園に迷い込んで害獣として駆除されていることも頻繁に起きています。
◆人権問題
パーム油の生産における作業は非常に重労働であり、強制労働や児童労働も問題点となっています。
キャットフードにパーム油が使われるのは稀
牛脂と比較するとパルミチン酸が多い特徴があり、融点がやや高い物が多く配合量次第では体温で溶けきらないため、ドライフードで下痢や軟便が起こらない0.5~2%程度の配合量で他の油脂と併用される事が多い。飽和脂肪酸含量が高い事とトコトリエノールを含むため、酸化安定性は高い。
キャットフードのパーム油の使用は稀
パーム油は他の植物油と比べて安価で多用途な植物油であり、酸化しにくく保存性が高いことから、食品や化粧品、洗剤、バイオマス燃料などさまざまな製品に使用されていますが、キャットフードの原材料としてパーム油が使用されるのは稀です。
また、パーム油が原材料として配合されていても「植物油脂」「植物性油脂」などと記載されていることが多く、具体的にパーム油と表記されない場合があります。
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他の油脂と配合されることが多い
パーム油がキャットフードの原材料として使用されるのは、牛脂と同様、飽和脂肪酸源として使用されることが多くみられます。
体温で溶け切らない等の懸念点から、パーム油単体ではなく他の油脂と配合されることが多いといわれています。
キャットフードにおけるパーム油のメリット
パーム油100gあたりの栄養素 | |||
---|---|---|---|
エネルギー | 887 | kcal | |
ビタミンE | α-トコフェロール | 8.6 | mg |
β-トコフェロール | 0.4 | mg | |
γ-トコフェロール | 1.3 | mg | |
δ-トコフェロール | 0.2 | mg | |
不飽和脂肪酸 | リノール酸 | 9000 | mg |
α-リノレン酸 | 190 | mg | |
飽和脂肪酸 | パルミチン酸 | 41000 | mg |
※出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
ビタミンEの抗酸化作用
トコトリエノールはビタミンEの一種で強力な抗酸化作用を持つ成分です。細胞膜への浸透力が高く、アンチエイジングやコレステロール低減、皮膚保護などの健康効果が期待されています。
キャットフードが酸化しにくい
パーム油に含まれるビタミンEの抗酸化作用、さらにパーム油の酸化しにくいという特徴から、脂質が酸化しにくく保存性が高いというメリットがあります。キャットフードの品質を保つ役割を果たします。
コストの削減
パーム油は他の油脂に比べて生産コストが低いため、安価で大量生産が可能です。キャットフードメーカーにとっては経済的なメリットもあります。
まとめ
- パーム油は世界的に最も生産・輸出している植物油
- キャットフードの原材料に使用されるのは稀
- 強い抗酸化作用により保存性が高い
- パーム油の生産における環境問題や人権問題が指摘されている