目次
猫の代表的な病気一覧
猫の病気や疾患 | かかりやすさ | かかりやすい 成長段階 |
---|---|---|
ストルバイト尿路結石 | ★★★★★ | 若齢 |
胃腸炎 | ★★★★☆ | 若齢 |
ヘルニア | ★★★☆☆ | 若齢 |
感染症 | ★★★☆☆ | 若齢 |
膀胱炎 | ★★★★★ | 全年齢 |
皮膚炎・外耳炎 | ★★★★☆ | 全年齢 |
てんかん | ★★☆☆☆ | 全年齢 |
腎臓病・腎不全 | ★★★★★ | 中高齢 |
シュウ酸カルシウム結石 | ★★★★☆ | 中高齢 |
関節炎 | ★★★★☆ | 中高齢 |
結膜炎 | ★★★☆☆ | 中高齢 |
心臓病(心筋症) | ★★★☆☆ | 中高齢 |
糖尿病 | ★★★☆☆ | 中高齢 |
巨大結腸症 | ★★☆☆☆ | 中高齢 |
がん | ★★★★☆ | 高齢 |
歯周病・歯肉炎 | ★★★☆☆ | 高齢 |
認知症 | ★★★☆☆ | 高齢 |
甲状腺機能亢進症 | ★★☆☆☆ | 高齢 |
胃腸炎
胃腸炎は、猫の胃や腸に炎症が生じて下痢や嘔吐などの症状が見られる疾患です。原因は感染症や食物アレルギー、食中毒、ストレスなどが挙げられます。
軽症であれば数日以内に自然治癒する場合が多いです。対象は全年齢ですが、特に子猫や若齢の猫は胃腸炎が重症化しやすいので注意が必要です。
胃腸炎の中でも、慢性腸症の場合は数日で症状が改善せず、長期にわたって慢性的に炎症が続きます。原因不明なことも多く、抗菌薬や食事の変更、ステロイド投薬などの治療が行われます。
感染症
感染症は寄生虫や細菌、ウイルスなどによって引き起こされます。感染症は原因となる病原体によって症状は様々ですが、一般的に嘔吐や下痢、皮膚炎、神経障害、発熱、出血、胃腸炎などの症状が現れます。
感染症の種類によって致死率や治療方法、予防なども異なります。
また、人と動物の間で感染する人獣共通感染症は、動物は無症状でも人に感染すると重篤な症状を引き起こす場合もあるので、飼い主さんも警戒が必要です。
ヘルニア
ヘルニアは、体から一部の臓器が突出してしまっている状態です。幼齢期ではおヘソから腸が飛び出してしまう臍ヘルニアが多く見られます。直ちに問題があるわけではないので、去勢・避妊手術の際に一緒に手術することが多いです。
後天性の場合は、事故や怪我で強い衝撃や腹圧が原因となります。
尿路結石症
尿路結石症は、最も猫がかかりやすい病気のひとつです。
若齢から高齢まで、どの年齢を通しても発症例が多い病気になりますが、若齢ではストルバイト結石、高齢になるにつれシュウ酸カルシウム結石が多くなる傾向があります。
ストルバイト結石
ストルバイト結石症は、下部尿路に「リン酸アンモニウムマグネシウム結石」が形成される疾患で、幼齢~若齢に多く見られます。
細菌感染症やアルカリ性寄りの食事などを原因とします。酸性の療法食で結石を溶かすことが可能ですが、一度完治してもすぐに再発してしまうことが多いのも特徴です。
シュウ酸カルシウム結石
シュウ酸カルシウム結石症は、下部尿路にシュウ酸とカルシウムなどで構成された結石が形成される疾患で、中高齢期から増えてきます。
水分不足、高齢による運動不足、排尿回数の減少、酸性寄りの食事などを原因としています。シュウ酸カルシウム結石の場合はストルバイト結石と違って一度形成されると溶かせないので、外科手術を必要とします。
膀胱炎
膀胱炎は、排尿時の痛みや、排尿回数の減少を引き起こす下部尿路疾患の一つです。
細菌感染や膀胱結石などを主な原因としますが、原因がはっきりと分かっていない特発性膀胱炎も高い割合で確認されています。
尿路結石や腎臓病と併発することも多く、メスはオスよりも尿道が短く膀胱が近いので膀胱炎の発症率が高くなっています。
皮膚炎
皮膚炎は、ダニやノミ、ハウスダスト、食べ物などのアレルギーや細菌、カビ、またホルモン異常、腫瘍、自己免疫疾患などが原因で皮膚に炎症が起こる疾患です。
環境の変化やストレス、栄養の偏り、薬物の過剰投与などが原因となることもあります。
皮膚炎はステロイドの投与や内服薬などを利用してかゆみや炎症を抑えたり、アレルギーによるものであれば、原因となっているアレルゲンを除く対策を行います。
外耳炎
外耳炎は、外から確認できる耳の部分から鼓膜部分までに現れる炎症で、皮膚炎同様アレルギーやダニ、免疫疾患やホルモン異常などを原因とします。
若齢の猫から高齢の猫まで発症することがありますが、特に耳の通気性がよくない折れ耳の猫は発症しやすいので、定期的な耳掃除をして予防しましょう。
てんかん
てんかん(癇癪)は、脳細胞の異常な神経活動によって痙攣や手足のしびれ、よだれ、体のこわばりなどが10秒~数分続きます。原因は脳への外傷や感染症、低酸素症、脳腫瘍などが原因とされています。
てんかんの発作自体で亡くなる可能性は低いとされていますが、てんかんはいつ起こるか分からないので、ベランダや水の近くなど発作が起こる場所によっては命を落とす可能性があります。
完治は難しい病気ですが、抗てんかん薬などでてんかんの頻度を少なくする治療法が一般的です。
慢性腎臓病・腎不全
高齢猫の約8割以上が患っているのが慢性腎臓病です。
慢性腎臓病にはステージ4まで段階があり、ステージ1の段階ではほぼ症状はありませんが、ステージ3以降になると腎機能の大部分が失われ、腎不全や尿毒症を引き起こします。
治療ではステージが進行すると投薬などの対症療法を行いますが、それまでは基本的に食事療法がメインです。水分摂取量を増やし、タンパク質やリン、ナトリウムを制限した腎臓病用の療法食を獣医師から指定されることもあります。
関節炎
高齢になると、骨と骨をつなぐ関節の軟骨がすり減り、炎症や変形が起こる関節炎になる猫が増えてきます。
関節炎が慢性化すると変形性関節症を患う猫もいます。関節炎の原因は加齢や肥満で、血行不良や怪我による場合もあります。
痛め止めや鎮静剤などで関節の炎症や痛みを軽減します。予防対策としては、グルコサミンやコンドロイチン、オメガ3を配合したフードも販売されています。
結膜炎
結膜炎は、まぶたと眼球の間にある結膜部分が炎症している状態をいい、猫の発症率が比較的高く、治りにくいのも特徴です。
充血や目の痒み、眼球や目の周りの腫れ、涙などの症状が現れます。放置しておくと重症化して目が閉じたまま開かなくなってしまったり、失明する可能性もあります。
点眼薬や軟膏、目の洗浄などを行って治療します。
心臓病(心筋症)
心筋症とは、心臓の筋肉に異常があり心機能が低下する病気です。呼吸困難や食欲低下、後ろ肢の麻痺、不整脈などの症状はあるものの、わかりやすい症状がないため、気付かれずに突然死してしまう場合もあります。
心筋症の原因は遺伝や肥満で、純血種や心筋症の猫が家系にいる場合は、心筋症になるリスクが高いとされています。
手術や内服薬などが治療法として一般的です。
糖尿病
糖尿病は血液中の糖吸収に必要なインスリンというホルモンが減少し、血糖値が高い状態が続く疾患で、肥満や運動不足などが原因となります。
インスリンの減少が深刻な場合、血液中の糖を吸収利用できず、「糖尿病ケトアドーシス」というエネルギー不足になる合併症を引き起こすこともあります。
多飲多尿や食欲低下、嘔吐、体重減少などの症状があり、一度発症すると完治することはありません。治療では、自宅で毎日インスリンを注射します。
巨大結腸症
巨大結腸症(メガコロン)は、結腸の機能障害によって排便が困難になり、結腸が肥大化する病気です。
便秘が重症化すると、食欲不振や嘔吐、腸閉塞などを引き起こし、死に至ることもあるので、早期の治療が大切です。
治療では、軽症の場合は食物繊維量が多い食事への変更などを行いますが、重症度が高くなると、浣腸や投薬、用手排便、肛門からの注水を行い、緊急性が高い場合は、外科手術や結腸切除を行います。
がん
長生きする猫が増えた結果、高齢期で癌を患う猫も増えています。
猫に多いのが皮膚にできる腫瘍です。内蔵型に比べると悪性の可能性は低く良性が多いですが、乳腺の癌の場合、猫は高い確率で悪性腫瘍です。
内蔵型の場合、肝臓や小腸などにできるがんで、悪性度が高く、転移しやすい特徴があります。
癌細胞を取り除く外科手術、抗がん剤投与、放射線療法、免疫療法などで治療を行います。
歯周病・歯肉炎
歯周病や歯肉炎は、歯・歯茎の間にある溝(歯周ポケット)に炎症を広げる疾患です。猫が虫歯になった例は報告されていませんが、歯周病や歯肉炎は多くの高齢猫が患っています。
口の中を触られることや歯磨きを嫌がるので、歯を支える顎の骨に炎症が到達して重症化するまで気がつかないこともあります。
骨まで溶けている状態まで放置してしまうと大手術が必要になり、もとの骨や歯を取り戻すことはできないので、幼齢から歯磨きや歯周病対策を行い、予防することが大切です。
認知症
猫も15歳以上の高齢になってくると認知症を発症することが増えます。同じ物を何度も食べようとしたり、トイレを失敗したり、夜鳴きを繰り返したり、飼い主さんを攻撃したり、記憶が曖昧になって忘れてしまうことで様々な異変が見られるようになります。
認知症は治療方法がないので、トイレの粗相が続くようであればおむつをしたり、食事管理を徹底したり、危ない場所へ行かないように注意したり、人間の介護と同じように対策します。
またオメガ3脂肪酸は脳や神経を活性化させ、記憶力に効果があるとされているので、オメガ3脂肪酸を多く含んだフードで予防対策を考える方もいるようです。
甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。バセドウ病や甲状腺組織の腫瘍、甲状腺ホルモン薬の過剰投与などが原因で、シニア猫の10頭に1頭が発症しています。
発症すると臓器や細胞が働き過ぎてしまい、多飲多尿、下痢、嘔吐、心拍数の増加、精神不安定、攻撃行動などの症状が現れます。
抗甲状腺剤の投与や、甲状腺の切除を行うことで甲状腺ホルモンの働きを抑える治療を行います。
その他
クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
クッシング症候群とは、猫の副腎皮質でステロイドホルモンが過剰分泌されることによって、多飲多尿や脱毛、肥満や過食などの症状を引き起こす疾患です。
老化や腫瘍、長期のステロイド投与などが原因となります。
肺炎
肺炎は肺の中にある肺胞に細菌やウイルスが感染することで起こる炎症で、猫風邪やカリシウイルス、トキソカラなど感染症や他の病気の症状の一つとして見られることが多いです。
呼吸が荒くなり、咳の回数が多くなるなどの症状がわかりやすく、治療では原因となる病気や感染症の治療の他、酸素吸入や蒸気吸入が行われることもあります。
まとめ
- 尿路結石や腎臓病は特にかかりやすい
- 年齢によってかかりやすい病気は変化する