キャットフードの原材料:しらす(whitebait)
しらすとはウナギやニシン、イワシ、アユなどの魚の稚魚の総称です。卵からかえって1~2か月のもので、体長2cmほどまでのものをしらすといいます。体に色素がほとんどなく、透明~乳白色をしているためしらすと呼ばれるようになりました。一般的にしらすとしてスーパーで売られ食されているのは、カタクチイワシの稚魚です。
この記事では、しらすに含まれる栄養素やメリット、おすすめの与え方や注意点についてご紹介します。
しらすが原材料のキャットフード
しらすはさまざまなメーカーでドライフードやウェットフード、おやつの原材料として使用されています。
しらすの栄養素とメリット
しらすには、「生しらす」「釜揚げしらす」「しらす干し」があります。
- 生しらす:水揚げされたあと、優しく水洗いされたもの
- 釜揚げしらす:生しらすを塩水で釜茹でしたもの
- しらす干し:釜揚げしらすを2時間ほど天日干しし、水分を飛ばしたもの
下表は生しらす、釜揚げしらす、しらす干し100gあたりの栄養素です。しらすは乾燥により水分が抜けて重量が軽くなるため、その分100gあたりの栄養価が凝縮されています。
生しらす | 釜揚げしらす | しらす干し | ||
---|---|---|---|---|
エネルギー | 67 | 84 | 187 | kcal |
水分 | 81.8 | 77.4 | 46.0 | g |
たんぱく質 | 15.0 | 17.6 | 40.5 | g |
ナトリウム | 380 | 840 | 2600 | mg |
カルシウム | 210 | 190 | 520 | mg |
ビタミンD | 6.7 | 4.2 | 61.0 | μg |
葉酸 | 56 | 26 | 58 | μg |
セレン | - | 39 | - | μg |
ドコサヘキサエン酸(DHA) | 250.0 | 320.0 | 570.0 | mg |
エイコサペンタエン酸(EPA) | 90.0 | 120.0 | 200.0 | mg |
※出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
たんぱく質
上表は人間と犬、猫における必要な三大栄養素の割合です。
たんぱく質は筋肉や内臓、皮膚、被毛などを占めている構成成分で、猫の体作りに欠かせない栄養素です。
犬は人間と暮らしてきた中で雑食性が進んだことで、必要とする三大栄養素は人間と似ています。猫も人と共生していましたが肉食動物としての食性を持ち続けているため、たんぱく質をより必要とします。
とくに子猫は成長のために活発な細胞分裂を繰り返すため、成猫よりも多くのたんぱく質が必要です。
カルシウム
歯と骨の構成成分の99%はカルシウムです。歯と骨を丈夫にするだけでなく、筋肉の収縮・弛緩、ホルモンの分泌、血液の凝固、神経刺激の伝達や興奮など、体作りに欠かせない栄養素です。
ビタミンD
ビタミンDは、歯と骨を丈夫にするカルシウムの働きをサポートします。ビタミンDとカルシウムを一緒に摂取することで、歯と骨の形成がより丈夫なものになることが期待できます。
ビタミンDは日光浴をすることで生成することができます。皮膚腺で作られているため、毛づくろいで舐めることで摂取することができます。猫の毛づくろいは皮膚の汚れをきれいにするだけでなく、ビタミンDの摂取という役割もあるのです。
皮膚疾患を持っている猫やシニア猫は十分にビタミンDを生成することができないため、食べ物から摂取することが大切となります。
セレン
セレンとは体内で合成できない必須微量ミネラルで、土壌や水中に含まれています。食べ物中のセレンの含有量は、その植物が育った土壌や水のセレン濃度に起因します。
セレンは抗酸化作用を持っています。体内の活性酵素を除去し、細胞の生成や修復に効果があるため、がんや老化を防ぎます。また、免疫反応を強くする働きがあります。
ドコサヘキサエン酸(DHA)
ドコサヘキサエン酸は不飽和脂肪酸の一種で、脳の構成成分です。脳細胞の働きを活発化させるため、認知症の予防に効果的です。また血液をサラサラにする働きがあり、血液のつまりを予防します。
ドコサヘキサエン酸は脳や網膜に多く存在するため、体の組織が発達する胎児や成長期の猫に大切になる栄養素です。
エイコサペンタエン酸(EPA)
エイコサペンタエン酸はドコサヘキサエン酸と同様、不飽和脂肪酸の一種です。
猫は体内でエイコサペンタエン酸を作ることができますが、ごく少量です。そのため食べ物から摂取しなくてはならない必須脂肪酸となります。
また、しらすはキャットフードの原材料として使われることも多いですが、製造過程においての加工や加熱処理で性質が失われるといわれています。
そのため、しらすを食べることでエイコサペンタエン酸を効率よく十分に摂取することができます。
しらすのおすすめの与え方
しらすはとても小さな魚ですが、丸ごと一匹を一度にたくさん食べます。それはつまり、頭・骨・尻尾すべてを余すことなく食べることができるということです。そのため、しらすは小魚の中でも栄養を多く摂取できる食べ物といえます。
おすすめは、生しらすを茹でたもの
含まれる栄養素量やカロリー、脂質、食塩などを考えると、猫には生しらすがおすすめです。しかし生しらすは獲れてから鮮度が落ちるのが早く、数時間でえぐみが出てしまいます。また寄生虫や食中毒の危険性もあります。
そのため、猫に与えるのは生しらすではなく、生しらすを茹でたものがおすすめです。そうすることで、塩分を気にせず猫に与えることができます。
しらすは茹でると香りが強くなるので、食欲がない猫やキャットフードへの食いつきが悪い猫は食欲促進の効果が期待できます。
生しらすは産地以外のスーパーではなかなか売っていないでしょう。漁師さんや地元の人しか食べることができないので貴重な食べ物といえます。もし手に入れることができたら、必ず茹でてから与えてください。
釜揚げしらすは塩分が多い!必ず塩抜きを
釜揚げしらすはふんわりとした食感と、ほのかな塩気が特徴です。しかし人間用として売られている釜揚げしらすは大量の塩で味付けされています。減塩しらすであっても猫にとっては塩分過多となります。塩分の摂りすぎは腎不全や心疾患を引き起こす恐れがあるので、十分な注意が必要です。
猫に釜揚げしらすを与える場合は、必ず塩抜きしてください。減塩しらすでも、きちんと塩抜きしましょう。塩抜きの方法はいくつかあるので、やりやすい方法を試してみてください。
- 塩抜きの方法①沸騰したお湯を釜揚げシラス全体にかけて、数分放置する
- 塩抜きの方法②沸騰したお湯に釜揚げしらすを入れ、数分茹でる
- 塩抜きの方法③耐熱皿に釜揚げしらすと水を入れてラップをし、電子レンジで数十秒加熱する
塩抜きしたあとは、粗熱が取れるまで冷ましてから与えるようにしましょう。
猫にしらすを与えるときの注意点
過剰に与えない
釜揚げしらすを塩抜きしたといっても、塩分を完全に取り除いたわけではありません。しらすは小さいからといって多量に与えてしまうと、猫の小さい体には負担となってしまいます。与える量や頻度には十分に気を付けなければなりません。
しらすを与えるのは1~2週間に1回程度にし、一日の適正摂取カロリーの10%が目安となります。ひとつまみ程度をキャットフードにトッピングしたり、手作り食の一食材として与えたり、たまのご褒美として活用しましょう。
また消化機能が十分に発達していない子猫や、消化機能が低下しているシニア猫には与えないようにしてください。
ナトリウムの過剰摂取は腎臓に悪影響
しらす干しには、たんぱく質やカルシウム、ビタミンDなど猫の健康に良い栄養が豊富に含まれています。しかししらす干しはカロリーが高く、脂質や食塩が多く含まれているため、猫に与えるのはおすすめできないといえます。
とくにカルシウムやナトリウムなどのミネラルの過剰摂取は、猫の健康に害を及ぼします。ミネラルを過剰摂取すると、余分なミネラルの排出が間に合わず、体内にミネラルが蓄積されます。排出されなかったミネラルが結晶化し、シュウ酸カルシウム結石やストルバイト結石などの症状があらわれます。
猫は尿路系の病気を起こしやすく、とくにオスの猫は尿路結石や尿路閉塞を起こしやすいといわれています。短期間の極端な摂取は避け、子猫のころから積極的にしらすを与えることはしないようにしましょう。
まとめ
- しらすは小魚の中でも栄養を多く摂取できる
- 猫に与えるのは生しらすではなく、生しらすを茹でたもの
- 釜揚げしらすを与える場合は、必ず塩抜きをする