キャットフードの原材料:エビ(shrimp)
エビの種類は、食用だけでなく観賞用も含めると世界中で約3000種にも及びます。その中でも日本人が食用にするものは約20種類ほど。日本での漁獲量は少なく、そのほとんどがインドやベトナムからの輸入です。
猫に与えるなら赤エビと桜エビがおすすめ
私たち人間が食べられるエビは、甘エビや車エビ、赤エビ、桜エビ、ブラックタイガーなどさまざまな種類があります。
「猫にエビを与えてはいけない」というイメージが根強いのは、生のエビに含まれているチアミナーゼという酵素が栄養素を破壊し、健康に悪影響が出るためです。そのため、猫にエビを与えるときは加熱したものを与えれば健康に良い食べ物なんです。エビを原材料としたウェットフードやおやつも販売されています。
- ニュートロナチュラルチョイス/おやつ とろけるツナ&エビ
- ウェルネス/旨みしっとりフレーク仕立て ツナ&エビ
- シシア/キャットフード ツナ&エビ
- CIAOちゅ~る/とりささみ&甘えび
- アルモネイチャー/まぐろとえび
- AATU/サーモン、チキン&エビ
おすすめは赤エビと桜エビ
とくに、おすすめなのは赤エビです。スーパーでよく見かけるエビで、標準和名で「アルゼンチン赤エビ」といいます。ほとんどのエビは加熱すると赤く変色するのに対し、赤エビはもともと赤い色をしています。スーパーでは生の赤エビだけでなく、調理の手間を省くために茹でた赤エビが売られていることもあるでしょう。
また、桜エビもおすすめです。桜エビは赤色の3~4cmの小さなエビで、生息地は東京湾や駿河湾などに生息していますが、国内で漁獲できるのは静岡県の駿河湾のみです。スーパーでは乾燥させた素干し桜エビが売っていることが多いでしょう。
次項で、赤エビと桜エビの栄養素とメリットについてご紹介します。
エビの栄養素とメリット
下表は、茹でた赤エビと桜エビ100gあたりの栄養素です。
赤エビ(ゆで) | 桜エビ(ゆで) | ||
---|---|---|---|
エネルギー | 95 | 82 | kcal |
たんぱく質 | 22.5 | 18.2 | g |
脂質 | 1.8 | 1.5 | g |
ナトリウム | 310 | 830 | mg |
カリウム | 350 | 250 | mg |
カルシウム | 56 | 690 | mg |
セレン | 79 | - | μg |
※出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
必須アミノ酸のタウリン。疲労回復に効果的
タウリンは魚介類や肉類に豊富に含まれているアミノ酸の一種です。血液中の毒素である悪玉コレステロール値や中性脂肪の減少、視力低下の予防、血液の正常化など、体の疲れをとる働きを持ちます。
人や犬はタウリンを体内で合成することができますが猫は合成することができないため、食べ物からタウリンを摂取しなければなりません。通常のキャットフードにはタウリンが入っているのできちんと食べていれば問題はないのですが、キャットフードへの食いつきが悪い子や食欲不振な子は気づかないうちにタウリン不足になっている恐れがあります。とくにシニア犬は内臓機能の低下によりタウリンを十分に吸収することができないため、意識して摂取したい栄養素です。
高たんぱく・低カロリー・低脂質
エビは他の食材と比べて、高たんぱく・低カロリー・低脂質です。
赤エビ(ゆで) | 桜エビ(ゆで) | 豚肉(赤肉) | 牛肉(赤肉) | 鶏卵(全卵) | ||
---|---|---|---|---|---|---|
たんぱく質 | 22.5 | 18.2 | 21.9 | 21.3 | 12.2 | g |
エネルギー | 95 | 82 | 133 | 176 | 142 | kcal |
脂質 | 1.8 | 1.5 | 5.3 | 10.7 | 10.2 | g |
赤エビと桜エビは、たんぱく質が多いとされる肉類や卵に引けを取らないたんぱく質が含まれています。
肉食動物である猫にとって、たんぱく質を摂取することがとても重要になります。エビに含まれるたんぱく質は、たんぱく質が多く含まれている肉類にも引けを取りません。
エビは高たんぱく・低カロリーに加え、脂質も非常に少ないので、筋力を付けたい猫やダイエット中の猫におすすめの食べ物です。
桜エビはミネラルがたっぷり
桜エビはナトリウムやカリウム、カルシウムなどのミネラルが多く含まれています。
- ナトリウム:血圧の調整の働きを持ち、体内機能を一定に保つ
- カリウム:体内の浸透圧を調整し、高血圧を予防する
- カルシウム:歯や骨を丈夫にし、ホルモン分泌や神経刺激の興奮・伝達に関わる
赤エビのセレンは抗酸化作用を持つ
赤エビはナトリウムやカリウム、カルシウムなどのミネラルだけでなく、セレンも含まれています。
セレンとは強い抗酸化作用を持つ栄養素で、体内の活性酵素を除去することで細胞の修復や老化予防に効果があります。セレン単体でも抗酸化作用が十分に働きますが、ビタミンCやビタミンEと一緒に摂取することでより良い効果が得られます。
赤エビと桜エビのおすすめの与え方
絶対に生で与えない
赤エビも桜エビも、絶対に生で与えていけません。
エビに限らず、生の魚介類にはチアミナーゼという酵素が含まれています。チアミナーゼは、猫の健康にとって大切な栄養素であるビタミンB1(チアミン)を破壊してしまいます。ビタミンB1は体内で生成することができないので食べ物からの摂取が必要不可欠です。そのため、生のエビを食べるとビタミンB1がどんどん破壊され、ビタミンB1欠乏症になる恐れがあります。ビタミンB1欠乏症になると食欲不振や運動失調、四肢のふらつき、強い痙攣などの症状があらわれ、最悪の場合は死に至ります。
チアミナーゼは熱に弱いため、加熱すると破壊することができます。猫にエビを与えるときは、必ず十分に加熱してから与えましょう。
赤エビ
人間の場合は、小さいエビであれば殻や尻尾が付いたままでも揚げて食べることができます。しかし猫の場合は、いくら加熱したといっても非常に硬く、口内や喉を傷つけてしまうだけでなく消化不良となる恐れがあります。
猫に与えるときは必ず殻や尻尾を取り除き、身の部分を十分に加熱してから与えてください。食べやすいように小さくカットしてあげましょう。
桜エビ
産地以外のスーパーでは、釜茹でされた桜エビや素干し桜エビが売られていることが多いでしょう。桜エビは非常に小さいので丸ごと一匹を一度にたくさん食べます。それはつまり、頭や殻、尻尾すべてを余すことなく食べます。
そのため、桜エビを猫に与える時は包丁でみじん切りにすると良いでしょう。桜エビは香ばしい香りがするので、食欲がない子やキャットフードへの食いつきが悪い子に与えると食欲の促進が期待できます。
猫にエビを与えるときの注意点
頻繁に与えない
エビは加熱すれば猫が食べても大丈夫ですが、「食べさせても良い」という程度であって、「栄養摂取のために積極的に与える」というものではありません。とくにエビやイカなどの甲殻類は、猫にとって消化が悪い食べ物です。
頻度は1~2週間に1回程度にし、キャットフードにトッピングしたり、たまのご褒美として活用するのがおすすめです。
アレルギー
エビアレルギーや甲殻類アレルギーを持っている可能性もあるので、初めてエビを与えるときは少量からスタートしましょう。与えたあとはしばらく様子を見て、下痢や嘔吐、痒み。元気消失などの症状があらわれたらすぐに動物病院で診てもらってください。
人間用の加工品は与えない
人間用に作られたエビのお菓子やおつまみなどの加工品は塩分や調味料、保存料が多量に入っているので、猫の健康にとっては悪影響となります。おねだりされても与えないようにしましょう。
まとめ
- 生のエビにはチアミナーゼが含まれているため、絶対に与えない
- 猫にエビを与えるなら、赤エビと桜エビがおすすめ
- 猫は体内でビタミンB1とタウリンを合成できないため、食べ物からの摂取が大切