キャットフードに使われるアラビアガムとは。増粘剤としての役割、安全性、代替成分について

キャットフードに使われるアラビアガムとは。増粘剤としての役割、安全性、代替成分について

アラビアガムとは

アラビアガムとは、アフリカ大陸に広く分布するアカシア属の木から分泌される樹脂を乾燥・粉砕した天然多糖類です。特にスーダン、チャド、ナイジェリアなどで収穫される「アカシア・セネガル」や「アカシア・セヤル」などが主要な供給源であり、数千年にわたって食品、医薬品、絵の具、化粧品といった様々な分野で利用されてきた長い歴史を持ちます。

アラビアガムは水に非常に良く溶けるという特性があり、乳化安定剤、増粘剤、被膜剤などとして幅広く使われています。

特筆すべきは、アラビアガムが自然乾燥によって採取される天然樹脂であるという点です。合成化学物質ではなく、野生の木から分泌される植物由来の成分のため、自然由来を重視する現在は使われやすいひとつであるかと思います。

アラビアガムは比較的低カロリー

アラビアガムは比較的低カロリーなので、肥満傾向にある犬猫の健康を考慮した製品にも適しています。とくに食物繊維としても機能するので腸内環境を整える効果が期待され、便通の改善や腸内フローラのバランス維持に貢献することが期待されています

乾燥しやすいジャーキー製品にアラビアガムを加えてしっとりとした噛みごたえを実現し、同時に酸化や乾燥による風味劣化を防ぐ役割を担ったりもします

アラビアガムの安全性について

アラビアガムは米国FDA(食品医薬品局)や欧州EFSA(欧州食品安全機関)などの国際的な機関によって、ヒトおよび動物用食品添加物として安全であると認可されています。またAAFCO(全米飼料検査官協会)でも「食品グレードの増粘安定剤」として登録されていますので、キャットフードへの使用が問題視されているわけではありません。

ただ絶対に問題がないかというとそうではなく、他の増粘剤と同じように過剰摂取すれば消化トラブルを引き起こす場合があります。

アラビアガムと他の増粘剤との違いは?グアーガムやキサンタンガムとの比較

アラビアガムはその天然由来という点では、グアーガムキサンタンガムと同様ですが、構造や働きにはいくつかの違いがあります。

例えばキサンタンガムは発酵によって得られる細菌由来のガムで高い粘性を持ちますが、消化性にやや課題があるとされることもあります。

一方、アラビアガムは非常に低粘度ですが、安定性や乳化性に優れ、味やにおいに与える影響も少ないため、猫の嗜好性を損なわない点で評価されています

またグアーガムが特定の豆類由来であるのに対し、アラビアガムは木から分泌された樹脂という点でアレルゲンとなりにくいという特徴があり、アレルギー対応キャットフードに使われるケースもあります。

キャットフードのグアーガム。グアー豆由来の増粘剤。プレバイオティクスの整腸作用も期待!

キャットフードのグアーガム。グアー豆由来の増粘剤。プレイバイオティクスの整腸作用も期待!

2023年8月30日

アラビアガムのちょっと変わった一面

アラビアガムの生産はアフリカの乾燥地域における貴重な経済資源で、現地の持続可能な林業を支える重要な産業でもあります。

アカシアの木は乾燥地帯における砂漠化の防止にも寄与しているため、農薬や化学肥料を必要としない栽培環境から環境負荷の少ない「グリーン素材」としても認識されつつあります

このようにアカシアの木が育てられ、使われることは地球の未来に配慮した選択にもなってきます。

ABOUTこの記事をかいた人

古川菜々

帝京科学大学アニマルサイエンス学科卒業。愛玩動物飼養管理士2級、ペットセラピスト、ペット看護士の資格を取得。キャットフード勉強会ディレクターとして、猫ちゃんの栄養や病気、生態、キャットフードなどの情報を提供しています。猫ちゃんの魅力を発信し、飼い主さんの悩みや不安を解決することで、猫ちゃんと飼い主さんの幸せのお手伝いになれれば嬉しいです。