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【2019年6月動物愛護管理法改正】生後56日までの犬や猫がペットショップなどで販売禁止
幼犬・幼猫販売が制限
④出生後56日(8週)を経過しない犬又は猫の販売等を制限
引用元:動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律の概要
2019年6月、動物愛護管理法の改正が成立し、ペットショップなどで生後56日までの犬や猫を販売することが原則禁止されることが決定しました。改正前の法律では、生後49日(7週間)までの犬や猫の販売が禁止されています。今回の改正では1週間禁止期間が延びました。
ただ日本犬だけは例外です。天然記念物となっている日本犬(柴犬・北海道犬・秋田犬・甲斐犬・紀州犬・四国犬)はこれまで通り生後50日から販売が可能となっています。
今現在(2019.12)はまだ施行されていない
今現在2019年12月の時点では、まだ改正された法律が施行されていません。このため49日(生後7週間)までの幼犬・幼猫は販売が禁止されていますが、生後50日からであればまだ法律上では販売することが可能です。
施行されるのは2年以内ということで、2年以内のいつ改正された法律が施行されるか分かりませんが、すでに施行を見据えて業者や販売者側が自主的に56日を実施するケースも増えてきているようです。
生後56日(8週)まで販売を禁止する目的
生後7週と8週の違い
生後7~8週というと犬か猫か、また種類によっても変わってきますが、ミルクを終えて乳歯も生えてきていて、ちょうど離乳期やドライフードに移行する時期にあたります。
愛護法の改正によって出生後の販売時期の規制が厳しくなりましたが、たった1週間しか違わないことに疑問を感じた方もいるのではないでしょうか。正直「7週と8週の7日程度で何が違うんだろう?」と私自身感じて調べてみたところ、生後56日(8週)まで親元で育てることに意味があるようです。
免疫力を高め感染症を予防
生後8週を過ぎるまでは免疫がまだ不安定なので感染症にかかるリスクが高くなります。子犬や子猫の時期は感染症で命を落とすことも少なくはありません。
生後8週が過ぎる頃に免疫は安定するので、8週まで待つということは子犬や子猫が健康な状態で飼い主のもとへいくためにも必要な規制と言えます。
生後56日以降の子犬は問題行動を起こしにくい
また、生後56日以降では問題行動を起こしにくいこともわかっています。
麻布大の菊水健史教授(動物行動学)が行った調査によって、ペットショップなどで子犬を販売する場合、生後7週目で生まれた環境から引き離された犬よりも、8週目以降になってから引き離した方が、成長後にかみ癖などの問題行動を起こす割合が減ることがわかりました。
その結果、繁殖業者から生後50~56日で出荷された子犬と生後57~69日で出荷された子犬を比べると、成長後の「見知らぬ人に対する攻撃性」や「家族への攻撃性」などの問題行動の程度に「有意な差があることが証明された」(菊水教授)という。
菊水教授は「統計的に、引き離し時期を8週齢以降にすることによって問題行動の程度に差が出ることが明らかになった。ただその差は小さかったため、犬が母胎内にいる時期や出生初期の環境、遺伝などが問題行動の発生に強い影響を持っている可能性も研究していく必要がある」とする。
引用元:犬の問題行動、生後8週以降の「引き離し」で減少 – 朝日新聞デジタル
反対に、生後8週(56日)より早くから親元と離された場合、成長後に噛んだり吠えたりといった行動が起こりやすいことがわかっています。欧米などの先進国ではすでに8週までは親元で育てることが一般的に認知されており、法令などでも8週までは親元で育てることが制度として決まっているところもあります。
日本でもこの法改正が実施されることで、犬の問題やトラブルが減り、手に負えずに捨てられてしまったり保健所に連れて行かれる犬も減るかもしれません。
2012年法改正では生後8週に反対意見が多く実現できなかった
2012年の動物愛護管理法改正
7年前にあたる2012年の動物愛護管理法改正でも生後56日(8週)以下の幼犬・幼猫の原則販売禁止が検討されましたが、販売者側の反対が大きかったために8週規制は実現せず、生後49日(7週)にとどまりました。
PTでは昨年3月からの12回の関係者ヒアリングなどを経て、8週齢規制の導入を決めた。同じような規制は欧米先進国の多くで導入されているが、日本ではペット関連業界の反対が強く、2012年の動愛法改正で設けられた「生後49日」規制にとどまる。
引用元:朝日新聞デジタル – 子猫・子犬販売「生後8週は禁止」議連が案 反対根強く
日本のペットショップでは子犬や子猫が売れやすくなるよう、なるべく早く小さいうちにペットショップに並べられます。売れなければ困る、また短い飼育期間であればコストも低く済ませられるという販売者側の都合により、2012年の時点では実現できませんでした。
動物愛護管理法について
動物愛護法(動物愛護管理法)とは
動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法、動物愛護管理法)は、1973年(昭和48年)に定められた法律です。動物虐待などの防止を目的につくられた法律で、これまで1999年、2005年、2013年、2019年と改正が行われ、2019年の改正では特にマイクロチップ装着などの新しい義務が加わり、罰則も強化されました。
動物愛護は犬や猫だけが対象というわけではなく、牛・馬・豚・羊・ヤギ・ウサギ・とりなど、哺乳類、鳥類又は爬虫類に属する生き物も愛護動物に含まれます。
ただ熱帯魚や両生類以下の動物については、愛護動物には含まれていません。
法改正で成立した8週規制以外の内容
動物愛護法(動物の愛護及び管理に関する法律)の改正内容の概要は下記のようになっています。その中でも今回の記事の幼犬・幼猫の販売の制限は、項目2に含まれます。
- 動物の所有者などが遵守すべき責務規定を明確化
- 第一種動物取扱業による適正飼養等の促進等
- 動物の適正使用のための規制強化
- 都道府県などの措置等の拡充
- マイクロチップの装着等
- その他
マイクロチップの装着義務化については下記で詳しく紹介しています。
動物愛護管理法の改正のまとめ
動物愛護管理法と2019年の法改正についてお話してきました。今回の法改正ではだいぶ日本でも動物愛護への意識が高まったことで、罰則や義務も増えたように思います。
この調子で日本でもより多くの人が、動物を家族やパートナーとして考えられる世の中に近づいていけたら嬉しいですね。