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猫の体の状態に合わせてキャットフードの給与量の見直しを考える飼い主さんもいらっしゃるかと思います。
ということで、ここでは愛猫の状態や体調に合わせた給与量の目安や、詳しい計算方法についてご紹介したいと思います!
基本的にはキャットフードに記載の目安量でOK
基本的にはメーカーやブランドが提示している給与量に従って与えましょう。
キャットフードによって100gあたりに含まれる栄養やカロリーは異なるので、総合栄養食のキャットフードのパッケージには目安となる給与量が記載されています。
【画像】一般的な1日給与量:60g前後(去勢・避妊済み 4kgの成猫)
日本猫の平均体重4kgの成猫(去勢避妊済み)の1日あたりのキャットフード給与量は、およそ60~70g前後(57~76g)になります。
計量カップで60gを量ってみたところ、120ccの線より少し多いくらいになりました。
粒の大きさや重量(水分量など成分割合)によってカサも変わるのであくまで参考程度にご覧ください。
1日に必要なカロリーとキャットフード給与量の計算方法
続いて猫の状態(体重・成長段階・体型)、係数、キャットフードのカロリーをつかって、1日に必要な給与量を計算します。
下記で紹介する計算式は、愛猫の成長段階、活動量、体型に合ったカロリーが計算できます。
1. 必要カロリー要求量(DER)を求める
係数確認表 | 係数 |
---|---|
成猫 (去勢・避妊なし) | 1.4 |
成猫 (去勢・避妊済み) | 1.2 |
肥満傾向の猫 | 1.0 |
高齢の猫 | 1.1 |
妊娠中の猫 | 2.0 |
授乳中の猫 | 2.0~6.0(自由給与) |
成長期の猫 | 3.0(4ヶ月未満) |
2.5(4~6ヶ月未満) | |
2.0(7~12ヶ月) |
4kgの成猫(去勢避妊済み)の場合、計算式は(30×「4」kg+70)×「1.2」で、必要カロリーは約228kcalとなります。
2. 給与量を求める
上記で必要カロリーを求めたら、お使いのキャットフードのカロリーに合わせて計算します。
キャットフードの多くは300~400kcal(100g)なので、ここではキャットフードのカロリーを中間の350kcal(100g)として計算してみます。
必要カロリーは約228kcalと求められたので、350kcal/100gのキャットフードの給与量は、65.14g(228kcal÷350kcal×100)となります。
計算例
2kgの子猫の給与量の計算例
2kgで去勢避妊前の子猫の給与量は、およそ81~108gになります。
2kgで去勢避妊前の猫の場合、計算式(30×2kg+70)×2.5から必要なカロリーは1日325kcal、300~400kcalのキャットフードで当てはめると81~108gの範囲になります。
低カロリーな300kcalのキャットフードでは1日に100g以上完食しなければならないので、物理的な摂取可能量を考えると子猫にはカロリーが高めの食事がおすすめです。
5kgの高齢猫の給与量の計算例
5kgで去勢避妊済みの高齢猫の給与量は、およそ61~81gになります。
5kgの老猫の場合、計算式(30×5kg+70)×1.1から必要なカロリーは1日242kcal、300~400kcalのキャットフードで当てはめると61~81gの範囲になります。
高齢猫は運動量が少なくなり体重が多いと関節にも負担をかけるため、成猫や子猫よりも少なめの量になるように係数が設定されています。
誤差がある? 計算した給与量>メーカーの目安量
上記の計算式によって導かれた給与量(要求量)は、実際のキャットフードの目安と比べると誤差があります。
上記で紹介したキャットフードのエネルギー要求量の計算では、必要カロリーはメーカーが提示する目安量より多く出てしまいます。
実際に、今この執筆時点で手元にある市販のキャットフード2商品で検証してみます。
390kcal/100gのキャットフード
給与目安は3kgの室内猫で40gと記載がありますが、計算で求めた給与量は49gです。カロリーで比較すると、メーカーが記載する給与量は必要カロリーの約60kcalも低くなります。
410kcal/100gのキャットフード
給与目安は3kgの室内猫で44gと記載がありますが、計算で求めると給与量は47gです。カロリーで比較すると、メーカーが記載する給与量は35.6kcalほど低くなります。
給与量のg数でみればそこまで大きな差ではありませんが、総合栄養食では必要カロリーを満たした値になるはずです。計算式で出たカロリーと市販フードの目安のカロリーに誤差が出るのはなぜなのでしょうか。
キャットフードの目安量と計算式に誤差がある理由は?
実際には缶詰やおやつも与えているため
成猫のキャットフードには、缶詰やおやつもあります。
缶詰だと1缶80gで30~40kcal、パウチのウェットタイプで1袋40gで10~40kcal、またスナックタイプのおやつでも1袋3gで10kcal近くになるものもあります。
こうしたキャットフードを食事の合間におやつとして与える時も、ドライフードと同じく1日の総カロリーとして計算に入れなければなりません。1日に必要な適正カロリーは、その日1日飲んで食べたもの全てを計算に入れる必要があります。
本当はエネルギー要求量はもっと少ないという見解や書籍も
成猫のエネルギー要求量は本当はかなり少ないのではないかという見解もあります。
ある書籍によれば、生まれたばかりの子猫は母乳からおよそ1日200kcal摂取していることがわかっています。これが離乳時には260kcal、6ヶ月頃には150kcal程度が必要とされ、これらは成熟時に比べて約2倍に相当するエネルギー量であると言われています。
この数値が成熟時に比べて2倍ということは、成猫ではエネルギー要求量は100kcal以下でも問題がないということになります。
ただしこの解釈には各社、各団体、各書籍で様々あるため、必ずしもこの見解が正しいとはいえません。実際に各協会や各メーカーが提示しているエネルギー要求量の計算式では3kgの猫で150~200kcal前後の数値が出ています。
給与方法や採食スタイルもカロリーに関係している
エネルギー要求量が少ないからといって、キャットフード自体のカロリーが低くてもいいのかというとそういうことではありません。
猫への給与方法として、完全自由摂取方式、時間制限給与法、質的制限給与法などがあり、与え方によって摂取できるカロリーが変わります。
また猫はムラ食いもあることから、食べる時と食べない時に差があります。このため栄養不足に陥らないように想定より少ない量でもしっかりと栄養が摂取できるような設定になっています。
まとめ:猫にとって必要な摂取カロリーは科学的根拠に乏しい
上の記述でも分かるとおり、猫にとって本当に必要な摂取カロリーというものは計算が難しく、科学的にはっきりした根拠に乏しいものといえます。
さらに必要になるカロリーは上で用いたライフステージや健康状態だけでなく、猫の品種や系統、飼育環境など多様な条件によって大きく変わります。このため、始めの計算式を用いても完璧に正確なカロリーを導き出せるとは考えにくいということが言えます。
猫にとって必要だと考えられる栄養素の大まかな値は、各企業やメーカーの実績や実証などでわかってきています。各栄養素が欠乏しないように必要量が摂取できつつ、かつカロリーも想定範囲内にするために給与量が設定されています。
ペットフードに関する数々のデータや知識の多くはペットフードメーカーが持っているので、これまでの販売実績や給餌試験、研究などを元に決められた給与量であると考えると、各キャットフードの目安をもとに給与量を決めるのが適切かと思います。