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猫は塩分が必要
猫の塩分に関して、「与えすぎはよくない」「人の食事は塩分が高すぎて良くない」とたびたび耳にします。
塩分に含まれるミネラルは生きていくうえで必要不可欠な成分で、互いにサポートし合い、体の中でさまざまな効果を発揮します。塩分の主成分であるナトリウムもその一つです。
ペットフードの栄養基準やラベル表示の基準を示しているAAFCOによると、キャットフードに含まれるナトリウムの下限値は幼猫も成猫も0.2%以上となっています。そのため、販売されているほとんどのキャットフードには塩分が含まれています。上限値が定められていないのは、猫はナトリウムを尿として効率よく排出することができるためです。また、人であれば塩分の過剰摂取はさまざまな疾患のリスクを高めますが、猫は塩分の摂取が血圧の変化に影響しないといわれています。
とはいえ、塩分の過剰摂取は健康に悪影響となります。キャットフードに加え、おやつを頻繁に与えていたり、人の食事を与えていたり、つまみ食いや盗み食いが常習化している猫は塩分を摂りすぎているかもしれません。
普段猫に与えているキャットフードにはどのくらい塩分が含まれているのか、ナトリウムから導く食塩の計算式、猫の適正な塩分摂取量をご紹介します。
塩分の過剰摂取は腎臓に大きな負担
塩分の過剰摂取は腎臓に大きな負担となりますが、これはナトリウムの排出に腎臓が関わっているためです。
通常は腎臓の働きによって体内の余分なナトリウムを濾過して尿として排出しますが、腎臓機能が低下しているとうまく排出することができません。そうなると血液中に老廃物が溜まっていき、体のさまざまな臓器の働きに支障をきたして慢性腎不全を併発する恐れがあります。腎臓機能が低下し始める高齢猫はとくに注意しましょう。
腎臓病は特定の原因があって発症する病気と異なり、気づかないうちにゆるやかに症状が進行していきます。また完治が難しい病気であるため、治療は症状の緩和が目的になります。
腎臓病は明確な予防法がないのが現状ですが、罹患率が急激に上がる6歳ごろから塩分の含有量に着目してみましょう。健康な猫の場合は一般的なキャットフードで過剰摂取にはなりませんが、腎臓への負担を避けるためには塩分含有量が多いキャットフードは避けた方が良いでしょう。
塩分自体が腎臓病の発症の原因になるというわけではなく、すでに腎臓になんらかのトラブルがある状態の猫の負担を抑えるには、塩分の摂取量には注意が必要となります。
積極的な塩分制限は必要ない
健康な猫用のキャットフードのナトリウム含有量はほとんどが0.4%~0.8%であり、現在キャットフードとして販売されている塩分量であれば問題はないため、積極的な塩分制限は必要ありません。ただ、ナトリウム含有量が1.2%を超えるような高塩分食の積極的な摂取は避けましょう。
また、おやつや人の食事はキャットフードよりも塩分が多く含まれています。
おねだりが可愛くてつい与えてしまいがちですが、おやつはたまのご褒美として活用しましょう。とくに人の食事は猫にとって塩分過多となり、健康に悪影響となります。
ナトリウムから導く塩分含有量の計算式
塩分は、正式には塩素とナトリウムの化合物の塩化ナトリウム(NaCl)です。そのため、キャットフードに記載されるナトリウム量は塩分量と同一ではありません。
キャットフードに含まれるナトリウム量(%)から塩分(g)に換算するには、下記の計算式で求めることができます。
2.54とはNa(23)がCl(58.5)になる質量比で、ナトリウム1.0gは食塩相当量で2.54gとなります。
例えば、キャットフードに含まれるナトリウム量が0.5%の場合、
ナトリウム量は0.5g(500mg)であるため、塩分は500(mg)×2.54÷1000=1.27(g)となります。
1日に必要な塩分の量は?塩分摂取量の許容量
では、猫は1日にどのくらいの塩分が必要なのでしょうか?
塩分は、過剰摂取はもちろん危険ですが不足しすぎるのも健康に悪影響となります。そのため、さまざまな調査機関によって塩分摂取量の最小値、最大値、許容量が定められています。
塩分摂取量の最小値
AAFCOによると、猫の年齢や性別、妊娠状態に関わらず、ナトリウムの摂取量の最小値を0.5mg/kcal(0.5g/1000kcal)としています。
塩分摂取量の最大値
フランス・ナント大学の研究によると、猫の塩分摂取量の最大値としては下記を推奨しています。
尿路結石、血圧変化、心血管系の変化、腎臓病など、ナトリウム摂取量の変化が猫の健康に与える影響についてレビューします。最近の長期研究によれば、食事中のナトリウム濃度が代謝エネルギー740mg/MJまで上昇しても有害な影響は示されていないため、現在の知識に基づくと、この濃度が SUL とみなすことができます。
猫の年齢に関わらず、ナトリウム摂取量は1日あたり3.1mg/kcal(740mg/MJ)が最大とみなしています。
塩分摂取の許容量
動物の栄養要求量やペットフードの飼料の栄養成分を公表しているNRC(米国学術研究会議)によると、ナトリウムの推奨摂取量は子猫で3.09mg/kcal(740mg/MJ)、成猫で0.17mg/kcal(40mg/MJ)としています。
これまでご紹介した通り、調査機関によって基準値がバラバラですが、NRCとAAFCO、ナント大学が定めるナトリウム摂取量の最小値と最大値、推奨値をまとめると、
となります。
うちの子は?1日に必要な塩分量
猫が1日に必要な塩分量は、1日の適正摂取カロリーによって異なります。
例えば、1日の適正摂取カロリーが400kcalの猫の場合、
1日に必要なナトリウム摂取量は
最小値が0.5(mg)×400(kcal)=200(mg)、最大値が3.1(mg)×400(kcal)=1,240(mg)
つまり、1日に必要な塩分量は
最小値が200(mg)×2.54÷1000=0.51(g)、最大値が1,240(mg)×2.54÷1000=3.14(g)
食塩摂取の許容量は 0.51(g)~3.14(g)となります。
普段食べているキャットフードが3.14gよりも多い場合は、キャットフードの変更の検討や、おやつの頻度や量の見直しが必要となります。
愛猫の1日の必要カロリーを調べ、1日に必要な塩分量を計算してみましょう。
まとめ
- ナトリウム量(%)から塩分(g)の計算式 食塩相当量(g)=ナトリウム(mg)×2.54÷1000
- ナトリウム摂取の許容量 0.5mg/kcal~3.1mg/kcal