猫はカブ(turnip)を食べても大丈夫!
カブはアブラナ科アブラナ属の根菜の野菜です。七草粥で用いられる春の七草のひとつスズナとしておなじみで、「神様を呼ぶ鈴」という意味を持ち、縁起物とされています。
カブは他の野菜と比べてクセが少ないので、猫も好き嫌いなく食べやすいでしょう。

この記事では猫がカブを食べることで得られる栄養価について、与えるときの注意点をご紹介します。
猫が食べられるのはどの部分?

カブには長い茎と葉、白い部分の胚軸、ひげ状の根が付いています。白い部分が淡色野菜、葉の部分が緑黄色野菜です。
猫が食べても大丈夫なのは、葉と茎、胚軸です。
胚軸は一般的な名称ではないので、胚軸の部分を「根」としている場合がほとんどです。この記事でも、胚軸を根と表記します。
カブの栄養素とメリット
下表は、生のカブと茹でたカブ100gあたりの栄養素です。
根 | 根 | 葉 | 葉 | ||
---|---|---|---|---|---|
生 | ゆで | 生 | ゆで | ||
エネルギー | 19 | 20 | 20 | 20 | kcal |
カリウム | 250 | 250 | 330 | 180 | mg |
β-カロテン | 0 | 0 | 2800 | 3200 | μg |
ビタミンE | 0 | 0 | 3.3 | 3.5 | mg |
ビタミンC | 18 | 16 | 82 | 47 | mg |
葉酸 | 49 | 56 | 110 | 66 | μg |
食物繊維 | 1.4 | 1.7 | 2.9 | 3.7 | g |
※出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
β-カロテン、ビタミンE:葉にだけ含まれている
β-カロテンとビタミンEは葉にだけ含まれています。
β-カロテンは抗酸化作用を持ちます。体内に蓄積された活性酵素を除去し、細胞の生成や修復を行います。そのため、β-カロテンの摂取は皮膚や被毛の健康維持、免疫力の向上、老化やがん予防に役立ちます。
ビタミンEは体内の活性酵素による酸化ストレスを抑制し、細胞膜を保護する働きを持ちます。そのためビタミンEは老化の予防に期待できます。
ビタミンC:葉には根の約4倍含まれている
葉に含まれるビタミンCは、根の約4倍含まれています。
ビタミンCはβ-カロテンと同様に強い抗酸化作用を持ちます。さらにコラーゲンの生成や皮膚や粘膜の健康維持、治癒力の向上、口内の病気の予防、白内障の予防などさまざまな働きがあります。
猫は肝臓でビタミンCを合成・貯蔵することができるので積極的にカブを摂取する必要はありませんが、肝臓に病気を持っている猫や、内臓機能が低下しているシニア猫、妊娠・授乳中の母猫などはビタミンC摂取量に気を配りましょう。
葉酸
葉酸はビタミンB群の一種で、緑黄色野菜に多く含まれています。犬は腸内細菌によって多少の葉酸が作られますが、猫は食べ物からの摂取が必要となります。
猫は腎臓で血液を作る造血ホルモンを分泌しますが、腎臓機能が低下している場合は十分に造血ホルモンを分泌できず、貧血が起こりやすくなります。葉酸は「造血のビタミン」とよばれるほど、赤血球の生成やDNAの合成に大きく関わっています。そのため、葉酸の摂取は貧血の予防に期待できます。
葉酸の摂取量に注意が必要なのは、妊娠・授乳中の母猫です。葉酸は肝臓で貯蔵されますが、母猫は体内で活発に細胞増殖・細胞分裂が行われるため、十分な葉酸を摂取していないと葉酸欠乏症になります。
母猫が葉酸欠乏症になると胎児形成異常が起こり、胎児が口唇裂や脊椎披裂などの奇形の要因となる恐れがあります。
食物繊維
カブには不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の両方が含まれています。
- 不溶性食物繊維:水分を保持して腸の蠕動運動を促進し、便の量と硬さを増加させる
- 水溶性食物繊維:水に溶けてゲル状に固まる
食物繊維は消化されないため栄養にはなりませんが、腸内細菌のエサとなって腸内環境を改善する働きがあります。お腹の調子に悩んでいる猫におすすめです。
カブのおすすめの与え方
葉:細かくカット
これまでご紹介した通り、カブの葉には根よりも栄養が豊富に含まれています。
猫はカブを生のまま食べても大丈夫です。しかし猫は野菜の消化が苦手なので、胃腸への負担を考えると茹でた方がおすすめです。
猫に葉を与えるときは、茹でて細かくカットしましょう。葉は茹でてもシャキシャキとした歯ごたえがあるので、キャットフードにトッピングするとシャキシャキ感が楽しく、食欲促進が期待できます。
根:細かくカット、またはすりおろす
カブの皮の内側には厚い繊維があり、消化不良の原因となるので厚く剥くことがおすすめです。皮を剥いカブは空気に触れるとアクが出るので、皮を剥いたら10分ほど水にさらしておきましょう。
根を生で与えるときは、細かくカット、またはすりおろすことがおすすめです。
カブは茹でることでホクホクとした食感になり、食べやすく胃に優しくなります。猫に与えるときは、ヤケドしないように粗熱を取りましょう。
茹でるとβ-カロテンの吸収率が上がる
β-カロテンは生に比べて、茹でた方が栄養の吸収率が上がります。β-カロテンを失わずに摂取するには茹でた方がおすすめです。
与えるのは1~2週間に1回程度
カブは栄養が豊富ですが、頻繁に与えると栄養素の過剰摂取となり、体調不良の原因となってしまいます。頻度は1~2週間に1回程度にし、キャットフードへのトッピングやおやつとして与えましょう。
カブを与えるときの注意点
腎臓病の子には与えない
カブに含まれているカリウムは体内の浸透圧の調整をしたり、細胞機能の維持に欠かせない栄養素です。体内に過剰に摂取したカリウムは尿として排出されます。
しかし、腎臓病を患っている猫は腎機能が低下しているため、尿と一緒にカリウムをうまく排出することができません。その結果、血中のカリウム濃度が上がってしまい「高カリウム血症」を引き起こす恐れがあります。
カブにはカリウムが豊富に含まれているので、腎臓病の子には与えないようにしましょう。
過剰摂取はNG
カブやキャベツなどのアブラナ科の食べ物には、グルコシノレートとよばれる成分が含まれています。グルコシノレートは甲状腺ホルモンの分泌を抑制する作用があり、過剰摂取すると甲状腺機能低下症を引き起こす恐れがあります。
カブを食べたからといってすぐに影響があるわけではなく、またカブの過剰摂取によって病気が引き起こされた症例は報告されていませんが、子猫のころからの継続的な摂取や、極端な過剰摂取は控えましょう。
まとめ
- 根よりも葉の方が栄養価が高い
- 葉には抗酸化作用を持つ栄養素が豊富に含まれている
- カブは生で食べても大丈夫だが、胃腸への負担を考えると茹でる方がおすすめ
- 腎臓病のある猫、甲状腺に問題のある猫には、与えるのは控える