キャットフードのアミノ酸:ロイシン (leucine)
ロイシン(leucine)は、必須アミノ酸のひとつで、細胞内外の情報伝達物質としてタンパク質生合成の促進や筋肉組織を維持する働きがあります。
ロイシンと同じく必須アミノ酸のバリン、イソロイシンは「分岐鎖アミノ酸(BCAA)」という血液や筋肉中に存在する種類に分類され、BCAAは筋タンパク質中の必須アミノ酸の35%、哺乳類の必須アミノ酸のおよそ40%と約半分を占めています。
- 牛肉
- レバー
- アジ
- サケ
- かつお節
- チーズ
- 脱脂粉乳
- むね肉
- しらす
ロイシンは肉や魚、乳製品など動物性食品に多く含まれています。
猫におけるロイシンの働き
筋タンパク質の合成と分解抑制
ロイシンは筋肉や組織のタンパク質合成促進、分解抑制を行っています。
ロイシンは細胞内の酵素複合体(mTOR:mammalian target of rapamycin)を活性化させる働きがあり、タンパク質合成を促進します。さらにmTOR活性はタンパク質の分解を抑制する作用もあるので、すでにある筋肉を維持します。
筋肉の損傷抑制と筋肉増量
ロイシンの一部は体内で「β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸(HMB:β-hydroxy-β-methylbutyrate)」へ代謝されますが、HMBには運動時の筋肉損傷を抑えたり、筋肉量を増加させる働きがあります。
肝機能の向上
ロイシンには肝臓でのアルブミン合成を促進し、肝細胞の増殖を助けることで、肝機能を向上させる働きがあります。
特に猫は肉食で他の動物より多くのタンパク質を摂取するので、タンパク質の分解時に生成されるアンモニアを解毒するためには肝臓の働きが重要になります。
糖代謝調節作用
また、ロイシンには糖代謝の調節作用があると報告されています。 ロイシンにはインスリンの分泌を刺激し、インスリン抵抗性を改善すると考えられています。
キャットフードに必要なロイシンの量・基準
ペットフード公正取引協議会が採用するAAFCOのガイドラインによると、ドライタイプのキャットフードのロイシンの最低基準は、幼猫用最低基準が1.28%、成猫用最低基準が1.24%と定められています。
タンパク質合成や筋肉増強など幼猫・成長期の猫には特に必要な成分ということで、他のアミノ酸と比較しても比較的基準も多めになっています。最大値(上限値)の設定はありません。
ロイシンの欠乏/過剰摂取
欠乏
- 筋肉減少
- 体重減少
- 被毛のパサつき
- 肉球や皮膚の乾燥
ロイシンは筋タンパク質の維持やタンパク質の合成する働きがあるので、欠乏すると筋肉減少や被毛・皮膚の維持ができなくなります。
過剰摂取
- 他必須アミノ酸とのバランスが崩れる
- 免疫力低下
- 脂質の過剰摂取になりやすい
ロイシンは脂肪族化合物なので、ロイシンの過剰摂取は、脂質の過剰摂取になる可能性があります。ロイシンだけのサプリメントなど、脂質ではなく遊離したロイシン単体であれば、脂質の過剰摂取になることはありませんが、食材からロイシンを摂取すると、脂質が多くなりがちになるので、肥満に注意してください。
まとめ
- ロイシンはタンパク質の生合成や筋肉維持の働きがある
- 動物性食品に多く含まれる
- 幹細胞の増殖を助け肝機能を向上させる