キャットフードのアミノ酸。必須アミノ酸の種類と働き、制限アミノ酸の摂取が重要!

キャットフードの栄養素:アミノ酸類(amino acid)

タンパク質を構成する必須栄養素

アミノ酸(amino acid)はキャットフードに必要な栄養素のひとつであり、タンパク質の構成要素です。20種類ほどのアミノ酸が50個以上結合することでタンパク質となります。

体内の酵素によって結合していたタンパク質が分解されると、アミノ酸単体となり、体内でアミノ酸それぞれの作用や働きを発揮します。

キャットフード アミノ酸
キャットフード タンパク質

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2019年9月13日

猫の必須アミノ酸は人や犬より多い

猫にとってタンパク質がたくさん必要だと言われるのは、より多くの必須アミノ酸が必要だからです。

必須 アミノ酸 キャットフード 猫

人の必須アミノ酸は9種類、犬は10種類ですが、猫の必須アミノ酸は11種類です。

必須アミノ酸は必要不可欠な栄養素かつ体内で合成できない栄養素なので、猫は他の動物より多くの種類のアミノ酸を食事から摂取しなければなりません。

猫の必須アミノ酸の種類

タンパク質を構成するアミノ酸一覧働き猫の必須アミノ酸
アルギニン一酸化窒素の前駆体
成長ホルモン、インスリン、グルカゴンの分泌に関与
ヒスチジン成長に関与
ヘモグロビン、赤血球の産生に関与
イソロイシン成長促進
神経機能補助
血管拡張
肝機能向上
ロイシン肝機能向上
肝細胞増殖の正常化
血糖コントロール
タンパク質生合成の促進
筋タンパク質の維持
筋肉グリコーゲン合成・酵素活性の促進
リジン身体組織修復
成長に関与
肝機能の向上
メチオニン開始アミノ酸としての役割
薬物中毒の解毒
肝機能の改善
フェニルアラニン
(チロシン)
血圧の上昇
鎮痛作用
ドーパミン・ノルアドレナリンの材料
スレオニン
(トレオニン)
成長促進
脂肪肝の抑制
トリプトファンセロトニンやメラトニンの前駆物質
コレステロール、血圧のコントロール
バリン成長に関与
血液中の窒素バランスの調整
肝機能向上
タウリン※カルシウムの細胞内外移動調節
心筋の収縮運動
胆汁酸塩合成
アラニンエネルギー源-
アスパラギン水素結合
糖鎖の結合
オキサロ酢酸の材料
-
アスパラギン酸アラニンの原料
神経伝達物質
-
システインタンパク質の立体構造に関与
補酵素CoAの成分
-
グルタミン酸興奮性神経伝達物質
アンモニア調節
アンモニア解毒
GABAの材料
グルタチオンの前駆体
-
グリシンクレアチンリン酸の前駆体
コラーゲンを構成
神経伝達物質
胆汁酸抱合体を形成
赤血球のヘム生合成
-
プロリンコラーゲンを構成
角質層保湿作用
コラーゲン修復作用
-
セリンさまざまな酵素の部分を構成
情報伝達を担う(リン酸化をうける)
中枢神経の栄養因子
-
チロシン
(フェニルアラニン)
アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンの前駆体
甲状腺ホルモンの前駆体
黒色色素メラニンの前駆体
-
グルタミン代謝性ストレスなど異化機能の亢進
免疫抑制の軽減
回復促進
-

タウリン ※

必須アミノ酸の中でも猫やキャットフードの話題でよく取り上げられるのがタウリン。タウリンは厳密にはアミノ酸ではありませんが、栄養学的にはアミノ酸と似た働きをすることから、アミノ酸として紹介されます。

タウリンは目や心臓、肝臓の健康維持、正常な発育や成長のために働き、猫にとって必須栄養素ですが、それが判明したのは最近です。

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2016年12月12日

キャットフードに必要なアミノ酸の量と基準

AAFCOが定める栄養基準ガイドライン

キャットフード アミノ酸引用元:2016 AAFCO Midyear Meeting Committee Reports|AAFCO

キャットフードの栄養基準を定めるAAFCOのガイドラインではアミノ酸の栄養基準は12項目+タウリンと細かく定められています。

アミノ酸名単位AAFCO
幼猫用最低基準
AAFCO
成猫用最低基準
最大値
(粗タンパク質)3026-
アルギニン1.241.04-
ヒスチジン0.330.31-
イソロイシン0.560.52-
ロイシン1.281.24-
リジン1.20.83-
メチオニン0.620.21.5
メチオニン・シスチン1.10.4-
フェニルアラニン0.520.42-
フェニルアラニン・チロシン1.921.53-
トレオニン(スレオニン)0.730.73-
トリプトファン0.250.161.7
バリン0.640.62-
タウリン0.10.1-
タウリン(缶詰め)0.20.2-

キャットフードの栄養基準は最低値(Minimum)のみ定められている項目が多いですが、中には最大値(Maximum)が設定されているアミノ酸もあります。また、メチオニン・シスチンやフェニルアラニン・チロシンなど複合的な基準もあるので、必須アミノ酸(11種類)よりも項目は多くなっています。

特定のアミノ酸だけ摂取しても意味がない

キャットフードのアミノ酸で特に重要視されるのが、アミノ酸同士のバランスです。

アミノ酸 キャットフード

左のイラストのように、すべての必須アミノ酸の充足率が満たされている状態であれば、より効率的にたくさんのアミノ酸がタンパク質として利用されますが、右のイラストのように充足率の低い制限アミノ酸が満たせないと、他のアミノ酸もタンパク質として十分に利用されません

このため、キャットフードや猫の食事では充足率が低い制限アミノ酸をどれくらい満たせるかどうかが、タンパク質の利用効率に大きく関わってきます。

アミノ酸スコアが高い食材やフードで利用効率を高める!

アミノ酸スコアの高い食材がおすすめ

より効率的にタンパク質を利用するには、充足率の低い必須アミノ酸を基準に考え、それぞれバランス良く摂取することが大切です。

この指標となるのが「アミノ酸スコア(アミノ酸価)」になります。アミノ酸スコアは第一制限アミノ酸の比率で表される評価で、100に近ければ近いほど、必要とするアミノ酸バランスに近い良質なタンパク質と評価されます。

アミノ酸スコアが高い食材は以下のものがあります。

アミノ酸価 アミノ酸スコア引用元:アミノ酸成分表編|日本食品標準成分表 2015年版(七訂) 

  • 鶏肉
  • 牛肉
  • サーモン(鮭)
  • ニシン
  • いわし など

※人間の必須アミノ酸が前提であり、猫の必須アミノ酸は人間より2種類多いので、人と同じとは限りません。

動物性食品は比較的アミノ酸スコアが高く、すべての必須アミノ酸の充足率が高い傾向があります。

単体でアミノ酸スコアが低くても食材の組み合わせで補える

一つ一つの食材のアミノ酸スコアが低くても、それぞれの足りないアミノ酸を補い合うことで、アミノ酸スコアを限りなく100に近い値に近づけることができます。

アミノ酸 キャットフード

たとえば、納豆とごはんは組み見合わせると、白米に足りないリジンが大豆で補われることから、アミノ酸スコアが高くなります。他にも食材の食べ合わせ・組み合わせによって、アミノ酸スコアを増強し、良質なタンパク源とすることができます。

食材や栄養への知識が必要になりますが、猫用手作り食を検討している方は、ぜひアミノ酸の充足率とアミノ酸スコアにも配慮してみてください。

キャットフードのアミノ酸のまとめ

猫田

以上、今回はキャットフードのアミノ酸についてまとめてきました。

  • アミノ酸はタンパク質の構成物質
  • 必須アミノ酸は生体によって違う
  • 猫の必須アミノ酸は11種類
  • 総合栄養食の場合、アミノ酸が足りなければ添加されている
鈴木さん
必須アミノ酸は11種類もあるんですね。これを把握して猫に与えるのはキャットフードでないと難しそうですね。
猫田
はい、人間や犬よりも必須アミノ酸が多い猫には、きちんと猫に向けた食事が大切であるということがわかっていただけたのではないでしょうか。

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一般社団法人ペットフード協会ペットフード販売士、キャットフード勉強会ディレクターとして、キャットフードに関する情報を提供しています。また、日本化粧品検定協会のコスメコンシェルジュ資格を有し、ペットフードだけでなく化粧品にも精通しています。販売時に必要な知識となる薬機法などについてもご紹介ができます。 日本化粧品検定協会会員。