目次
キャットフードの栄養素:アミノ酸類(amino acid)
タンパク質を構成する必須栄養素
アミノ酸(amino acid)はキャットフードに必要な栄養素のひとつであり、タンパク質の構成要素です。20種類ほどのアミノ酸が50個以上結合することでタンパク質となります。
体内の酵素によって結合していたタンパク質が分解されると、アミノ酸単体となり、体内でアミノ酸それぞれの作用や働きを発揮します。
猫の必須アミノ酸は人や犬より多い
猫にとってタンパク質がたくさん必要だと言われるのは、より多くの必須アミノ酸が必要だからです。
人の必須アミノ酸は9種類、犬は10種類ですが、猫の必須アミノ酸は11種類です。
必須アミノ酸は必要不可欠な栄養素かつ体内で合成できない栄養素なので、猫は他の動物より多くの種類のアミノ酸を食事から摂取しなければなりません。
猫の必須アミノ酸の種類
タンパク質を構成するアミノ酸一覧 | 働き | 猫の必須アミノ酸 |
---|---|---|
アルギニン | 一酸化窒素の前駆体 成長ホルモン、インスリン、グルカゴンの分泌に関与 | 〇 |
ヒスチジン | 成長に関与 ヘモグロビン、赤血球の産生に関与 | 〇 |
イソロイシン | 成長促進 神経機能補助 血管拡張 肝機能向上 | 〇 |
ロイシン | 肝機能向上 肝細胞増殖の正常化 血糖コントロール タンパク質生合成の促進 筋タンパク質の維持 筋肉グリコーゲン合成・酵素活性の促進 | 〇 |
リジン | 身体組織修復 成長に関与 肝機能の向上 | 〇 |
メチオニン | 開始アミノ酸としての役割 薬物中毒の解毒 肝機能の改善 | 〇 |
フェニルアラニン (チロシン) | 血圧の上昇 鎮痛作用 ドーパミン・ノルアドレナリンの材料 | 〇 |
スレオニン (トレオニン) | 成長促進 脂肪肝の抑制 | 〇 |
トリプトファン | セロトニンやメラトニンの前駆物質 コレステロール、血圧のコントロール | 〇 |
バリン | 成長に関与 血液中の窒素バランスの調整 肝機能向上 | 〇 |
タウリン※ | カルシウムの細胞内外移動調節 心筋の収縮運動 胆汁酸塩合成 | 〇 |
アラニン | エネルギー源 | - |
アスパラギン | 水素結合 糖鎖の結合 オキサロ酢酸の材料 | - |
アスパラギン酸 | アラニンの原料 神経伝達物質 | - |
システイン | タンパク質の立体構造に関与 補酵素CoAの成分 | - |
グルタミン酸 | 興奮性神経伝達物質 アンモニア調節 アンモニア解毒 GABAの材料 グルタチオンの前駆体 | - |
グリシン | クレアチンリン酸の前駆体 コラーゲンを構成 神経伝達物質 胆汁酸抱合体を形成 赤血球のヘム生合成 | - |
プロリン | コラーゲンを構成 角質層保湿作用 コラーゲン修復作用 | - |
セリン | さまざまな酵素の部分を構成 情報伝達を担う(リン酸化をうける) 中枢神経の栄養因子 | - |
チロシン (フェニルアラニン) | アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンの前駆体 甲状腺ホルモンの前駆体 黒色色素メラニンの前駆体 | - |
グルタミン | 代謝性ストレスなど異化機能の亢進 免疫抑制の軽減 回復促進 | - |
タウリン ※
必須アミノ酸の中でも猫やキャットフードの話題でよく取り上げられるのがタウリン。タウリンは厳密にはアミノ酸ではありませんが、栄養学的にはアミノ酸と似た働きをすることから、アミノ酸として紹介されます。
タウリンは目や心臓、肝臓の健康維持、正常な発育や成長のために働き、猫にとって必須栄養素ですが、それが判明したのは最近です。
キャットフードに必要なアミノ酸の量と基準
AAFCOが定める栄養基準ガイドライン
キャットフードの栄養基準を定めるAAFCOのガイドラインではアミノ酸の栄養基準は12項目+タウリンと細かく定められています。
アミノ酸名 | 単位 | AAFCO 幼猫用最低基準 | AAFCO 成猫用最低基準 | 最大値 |
---|---|---|---|---|
(粗タンパク質) | % | 30 | 26 | - |
アルギニン | % | 1.24 | 1.04 | - |
ヒスチジン | % | 0.33 | 0.31 | - |
イソロイシン | % | 0.56 | 0.52 | - |
ロイシン | % | 1.28 | 1.24 | - |
リジン | % | 1.2 | 0.83 | - |
メチオニン | % | 0.62 | 0.2 | 1.5 |
メチオニン・シスチン | % | 1.1 | 0.4 | - |
フェニルアラニン | % | 0.52 | 0.42 | - |
フェニルアラニン・チロシン | % | 1.92 | 1.53 | - |
トレオニン(スレオニン) | % | 0.73 | 0.73 | - |
トリプトファン | % | 0.25 | 0.16 | 1.7 |
バリン | % | 0.64 | 0.62 | - |
タウリン | % | 0.1 | 0.1 | - |
タウリン(缶詰め) | % | 0.2 | 0.2 | - |
キャットフードの栄養基準は最低値(Minimum)のみ定められている項目が多いですが、中には最大値(Maximum)が設定されているアミノ酸もあります。また、メチオニン・シスチンやフェニルアラニン・チロシンなど複合的な基準もあるので、必須アミノ酸(11種類)よりも項目は多くなっています。
特定のアミノ酸だけ摂取しても意味がない
キャットフードのアミノ酸で特に重要視されるのが、アミノ酸同士のバランスです。
左のイラストのように、すべての必須アミノ酸の充足率が満たされている状態であれば、より効率的にたくさんのアミノ酸がタンパク質として利用されますが、右のイラストのように充足率の低い制限アミノ酸が満たせないと、他のアミノ酸もタンパク質として十分に利用されません。
このため、キャットフードや猫の食事では充足率が低い制限アミノ酸をどれくらい満たせるかどうかが、タンパク質の利用効率に大きく関わってきます。
アミノ酸スコアが高い食材やフードで利用効率を高める!
アミノ酸スコアの高い食材がおすすめ
より効率的にタンパク質を利用するには、充足率の低い必須アミノ酸を基準に考え、それぞれバランス良く摂取することが大切です。
この指標となるのが「アミノ酸スコア(アミノ酸価)」になります。アミノ酸スコアは第一制限アミノ酸の比率で表される評価で、100に近ければ近いほど、必要とするアミノ酸バランスに近い良質なタンパク質と評価されます。
アミノ酸スコアが高い食材は以下のものがあります。
引用元:アミノ酸成分表編|日本食品標準成分表 2015年版(七訂)
- 卵
- 鶏肉
- 牛肉
- サーモン(鮭)
- ニシン
- いわし など
※人間の必須アミノ酸が前提であり、猫の必須アミノ酸は人間より2種類多いので、人と同じとは限りません。
動物性食品は比較的アミノ酸スコアが高く、すべての必須アミノ酸の充足率が高い傾向があります。
単体でアミノ酸スコアが低くても食材の組み合わせで補える
一つ一つの食材のアミノ酸スコアが低くても、それぞれの足りないアミノ酸を補い合うことで、アミノ酸スコアを限りなく100に近い値に近づけることができます。
たとえば、納豆とごはんは組み見合わせると、白米に足りないリジンが大豆で補われることから、アミノ酸スコアが高くなります。他にも食材の食べ合わせ・組み合わせによって、アミノ酸スコアを増強し、良質なタンパク源とすることができます。
食材や栄養への知識が必要になりますが、猫用手作り食を検討している方は、ぜひアミノ酸の充足率とアミノ酸スコアにも配慮してみてください。
キャットフードのアミノ酸のまとめ
以上、今回はキャットフードのアミノ酸についてまとめてきました。
- アミノ酸はタンパク質の構成物質
- 必須アミノ酸は生体によって違う
- 猫の必須アミノ酸は11種類
- 総合栄養食の場合、アミノ酸が足りなければ添加されている