炭水化物に含まれる「でんぷん」。でんぷんが危険というイメージはないと思いますが、「加工でんぷん」と聞くと、途端に化学的な感じがして、危険なのでは?と感じるかもしれません。
今回はキャットフードい使われる加工でんぷんについて働きや目的、物質の安全性について詳しく見ていきたいと思います。
加工でんぷんとは
天然由来のデンプンを加工
加工でんぷんとは、天然由来のデンプンに加工を行った食品添加物です。穀物や芋類などの植物から採れる天然のでんぷんに人口的な加工を行うことで作り出されます。
指定添加物(合成添加物)
加工でんぷんはでんぷんに加工が行われているので、「指定添加物(合成添加物)」に登録されています。
本来、添加物や原材料名の記載が必要になりますが、加工でんぷんは、これまで食品として取り扱われてきた実績から安全性が高いと判断されるため、細かい物質名を記載する必要がなく「加工でんぷん」とだけ表記さればよいことになっています。
加工でんぷんの目的と働き
増粘安定剤
加工でんぷんには、とろみや粘りをつけたり、ゼリー状に固めたりする増粘安定剤の働きがあります。糊料やゲル化剤などと呼ばれることもあります。
このため、加工でんぷんはウェットフードやセミウェットフードの食感調整や舌ざわりを良くすることを目的で加えられることが多いです。
乳化剤
また、加工でんぷんは、本来混ざり合わない水分と油分を分離しないようつなぎ合わせる乳化剤としての働きもあります。
こちらも水分や油分が多く含まれるセミウェットフードなどでよく使われます。
加工でんぷんの安全性
加工でんぷんは基本的には安全
加工でんぷんについて評価した試験成績では、ヒトにおける反復性投与毒性、発がん性、生殖発生毒性、遺伝毒性いずれも毒性はないとされています。
盲腸や腎臓に変化をもたらす?
高容量で投与した場合、ラットの盲腸や腎臓に変化があったことが認められましたが、これらはラット特有のもので人間の安全性は問題ないとのこと。ただ猫について、どのような影響があるかはわかりません。
乳幼児向け食品はモニタリング実施を検討
加工でんぷんは、人間には毒性はほとんどないと考えられていますが、乳幼児向け食品への使用については継続的な記録と観察を検討すべきとしているため、完全に信用していいものかと言われると疑問が残ります。
加工でんぷんの種類
加工でんぷんには11種類の物質があります。日本で加工でんぷんと表示できる食品添加物は下記の物があります。
- アセチル化アジピン酸架橋デンプン
- アセチル化リン酸化架橋デンプン
- アセチル化酸化デンプン
- オクテニルコハク酸デンプンナトリウム
- 酢酸デンプン
- 酸化デンプン
- ヒドロキシプロピルデンプン
- ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン
- リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン
- リン酸化デンプン
- リン酸架橋デンプン
避けたい加工でんぷん
ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン
この中で避けたい加工でんぷんは、上で赤字になっているヒドロキシプロピルデンプンと、ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプンです。
この二つは、プロピレンオキシドが残留している可能性があるからです。
プロピレンオキシドの危険性
プロピレンオキシドは発がん性の恐れがある物質で、国際がん研究機関はグループ2B(※)に指定されています。
(※)グループ2BはIARCによる人に対する発ガン分類で、グループ1は発がん性がある、グループ2Aは恐らく発がん性がある、グループ2Bは発がん性の恐れがある、グループ3は発がん性を分類できない、グループ4は恐らく発がん性はない、と評価しています。
上記の発がん性の総合評価は人に対するものですが、サル、イヌ、ラット、マウス、モルモットにおける吸入毒性の試験では、鼻汁、流涙、流涎、あえぎ、嗜眠、自発運動の抑制、脱力、協調運動障害など毒性の報告があり、試験データから動物に対してもプロピレンオキシドは発がん性があると考えられています。
どの加工でんぷんを使用しているか特定できない
キャットフードに使用されている加工でんぷん全てが危険なプロピレンオキシドを含んだものではなく、安全性の高い加工でんぷんが使用されていることもあります。
ただ、加工でんぷんと表記されてしまうと、私たちはどの種類の加工でんぷんが使用されているか調べることができません。このため、当サイトとしても加工でんぷんは避けた方がいいと考えます。
まとめ
- 自然由来のデンプンを加工した合成添加物
- 増粘安定剤や乳化剤として使用
- 乳幼児への使用は経過観察を検討すべきと見解
- 発がん性や毒性が懸念される物質がある
- 加工でんぷんは物質を特定できない