獣医師について
動物専門の医師
獣医師(Veterinary Physician)とは、獣医師免許を取得し、病気や怪我をした犬や猫、小動物などの愛玩動物、また牛や馬、豚、鶏などの畜産動物に対して、治療や診察、健康診断や検査、予防接種などを行うことができる動物専門の医師です。
獣医師免許は、獣医師教育機関において6年間の家庭獣医学を修め、農林水産省が行う獣医師国家資格に合格した者が取得できる職業で、令和2年の時点では、3万5,855人の獣医師が獣医事に従事しています。
海外では国や州によって獣医師の資格制度や免許の取得条件は異なるため、海外で獣医師の活動を行うには、現地の制度に従って受講や受験、免許の取得が必要になります。
獣医師の仕事・活動内容
獣医師の仕事、働き方は大きく4つに分けることができます。
- 小動物臨床獣医師
…動物病院で愛玩動物(ペット)の診療を行う - 産業動物臨床獣医師
…牛・豚・鶏など産業動物の診療や伝染病予防の指導を行う - その他の臨床獣医師
…動物園や競馬関連施設などの大型動物の診療を行う - 国家公務員
…厚生労働省や農林水産省で病原菌や感染症の拡大を防ぐために動物検疫などを行う - 地方公務員
…食肉検査や家畜の治療などを行う
小動物臨床獣医師
獣医師と聞いて最もイメージしやすい犬や猫などペット(愛玩動物)の治療を行う「動物のお医者さん」。動物病院を開業、または動物病院に勤務して愛玩動物の診療を行うのが「小動物臨床獣医師」です。犬や猫だけでなく、爬虫類や両生類、小動物などエキゾチックアニマルに特化した動物病院もあります。
獣医師を志す人の多くは小動物臨床獣医師を目指しており、獣医師従事者の内訳を見ても、獣医時に従事している約半数が個人の診療施設や民間団体で愛玩動物の診療に従事しています。
産業動物臨床獣医師
産業動物とは牛・豚・鶏などの産業動物を対象に診療や伝染病予防の指導を行う臨床獣医師です。主に農業共済組合や農業協同組合に勤務し、周辺の畜産農家への往診などを行います。また、動物病院などがない地域では、愛玩動物の診療を行う場合もあります。人手不足というもあり、地方では愛玩動物、産業動物など関係なく動物全般を診療する獣医師も多いです。
その他の臨床獣医師
上記以外の臨床獣医師では、動物園や水族館、競馬施設で暮らす大型の動物や、製薬度会社などで飼育される実験動物の飼育や診療を行う獣医師が挙げられます。
施設や従事者の数からいっても、上記に努める獣医師は少なく募集人数も多くありません。
国家公務員
国家公務員として獣医師が働く場合、全国の航空や海港にある検疫所や動物検疫所などで、食中毒対策、食品の輸出入など、国際的な食品安全対策に関する仕事を行います。また動物由来の人獣共通感染症である狂犬病、デング熱、鳥インフルエンザ等の動物由来感染症の防止策や正しい知識の普及、管理体制の整備などを行います。
検疫所は厚生労働省が、動物検疫所は農林水産省が、採用が行っているので、それぞれの採用試験を受けることができます。
地方公務員
地方公務員の場合、各都道府県庁や食肉衛生検査所、試験場や施設など、勤務場所は様々です。
仕事内容については、畜産行政や公衆衛生の行政事務が多く、具体的には食用の家畜肉の屠殺検査員として、病態検査や病原菌、人獣共通感染症や残留抗生物質の対策や環境監視業務を行い、食肉の安全、衛生を守ります。
また、野生の鳥獣保護や狩猟許可行政事務など林業に化する業務に携わる場合もあります。
獣医師国家試験について
獣医師の受験資格
画像引用元:獣医師国家試験の細目 獣医師国家試験|農林水産省
獣医師の受験資格は、獣医学科のある大学の6年課程を修めて卒業した者に与えられます。また海外で獣医師学校の卒業や免許を取得している人や、旧獣医師法で獣医師の免許を受けた人についても受験資格が与えられる場合があります。
しかしこれから日本で獣医師資格をとりたいと考える人は、ほとんどの方が下記の1の日本の獣医学科の大学で6年間の課程を修めて卒業するルートになるかと思います。
試験日程
試験会場は、北海道・東京・福岡の3会場で、毎年2月中旬に行われます。
獣医師国家試験の内容
試験は、必須問題に関する試験、学説に関する試験及び実地に関する試験に分けて行われます。出題数は合計330問で、いずれも筆頭はマークシート(多岐選択)方式となります。
- 必須問題に関する試験:50問
- 学説に関する試験:160問
- 実地に関する試験:120問
獣医師国家試験の出題範囲は非常に広いため割愛しますが、詳細は獣医師国家試験出題基準(平成26年改正)より確認できます。
難易度と合格率
第72回、2021年に行われた獣医師国家試験の結果を見ると受験者数1,146人のうち953人が合格。合格率は83.2%です。前年と比較すると3.3%ほど合格率が低くなっていますが、それでも予想より合格率が高いと感じた方も多いのではないでしょうか。
ですが獣医師国家試験の難易度が低いわけではありません。獣医師の国家試験は、受験資格が厳しく受験できる人数が限られます。また、獣医師は獣医学科のある育成機関で6年の課程を修めてはじめて受験資格が得られるので、本気で獣医師資格を取得したい人だけが受験します。
このため、知識のない状態でダメ元で受ける人はほとんどおらず、本気で合格を目指して受験する人ばかりなので、受験資格などがない資格試験に比べて合格率が高いのかもしれません。
獣医師の歴史
日本では、獣医師制度が始まる前は馬医など馬や家畜の診療が中心で、当時は獣医業務は無免許で行うことができました。明治時代までは医療と呪術や祈祷が混在したような形で伝来していましたが、開国により西洋文化が取り入れられ、近代化が進んだことで、獣医学教育が本格化しました。て1874年には明治政府によっ獣医学を学ぶための農場修学場が設立され、イギリスの獣医学教師による講義などが始まりました。1878年には農事修学場は、現在の東京大学農学部の前身となる駒場農学校として開校しました。
1885年に獣医師免許規則が交付され、獣医師免許を持つ者だけが業務として家畜動物等の診療を行えるようになりました。
その後、1977年の獣医師法改正により、獣医学教育は4年生大学から6年へ変更され、6年間の過程を修めて卒業することで獣医師国家試験の受験資格を与えられるようになりました。また、1992年に獣医師法の一部改正が行われ、動物診療以外に飼育動物に関する保健衛生の指導や畜産業の発展、公衆衛生の向上に寄与することが定められました。
まとめ
- 獣医師は動物専門の医師
- 獣医師だけ業務として動物の診療可能
- 受験資格は獣医学科のある育成機関で6年の課程を修めること