キャットフードのビタミンA(レチノール)。視覚や粘膜、免疫を維持!βカロテンは意味がない?

キャットフード ビタミンA レチノール

キャットフードの栄養素:ビタミンA(Vitamin A)

動物性食品に豊富なレチノール

ビタミンA(Vitamin A)とは視覚や皮膚粘膜の維持に重要な必須栄養素で、レチノール(retinol)という物質を指します。

ペットフードの栄養添加物には、パルミチン酸エステルなどのレチニルエステルが配合されています。食品ではレバー乳脂、肝油、など動物性の食品に多く含まれています。

レチノールは吸収されるとリンパ管、次いで血管を介して約90%が肝臓に貯蔵されます。このためビタミンAは動物の肝臓(レバー)や肝油から効率的に摂取できます。

ビタミンAの働き

視細胞で多くの光を取り込む「ロドプシン」を構成

ビタミンAは、眼球の網膜にある視細胞で「ロドプシン」という光受容タンパク質(視色素)を構成します。

ロドプシンは光を吸収する性質があるため、暗いところで物を見る時に必要な物質となります。普段から暗いところで活動をする夜行性の猫には重要で、ロドプシンが不足すると暗闇で自由に動けず、怪我の原因にもなります。

皮膚や粘膜を構成、正常な免疫系を維持

ビタミンAは上皮細胞で目、口、喉、胃腸や膀胱などの粘膜を維持しています。粘膜は細菌やウイルスなどの病原体をバリアする役割があるので、粘膜を維持することは正常な免疫機能を保つことにもつながります。

また、ビタミンAのレチノイン酸は遺伝子発現に関わっているため、皮膚の細胞分化を調整し、皮膚の健康を維持する働きがあります。

骨の代謝

ビタミンAは、骨の内側で古くなった骨を吸収する破骨細胞機能へ直接作用することが分かっており、骨代謝を調節し、健康な骨を維持する働きがあります

猫はβカロテンをプロビタミンAに変換できない

猫はβカロテンからレチノールを変換できません。

人や犬は、緑黄色野菜など植物性の食品に多く含まれる「βカロテン」を体内でプロビタミンAに合成し利用できますが、猫はβカロテンを摂取してもビタミンAとして利用できません。

このため、猫の場合は「ビタミンA」の状態である必要があり、動物原料の摂取が重要になります。

このため、数十年前にペットフードの栄養基準としてスタンダードだったNRC(2006)の栄養基準には、犬のビタミンA推奨量はβカロテン量が加味されたレチノール量が示されていますが、猫の推奨量はレチノール量の基準が示されています。

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キャットフードに必要なビタミンA量

キャットフード ビタミンA画像引用元:2016 AAFCO Midyear Meeting Committee Reports

ペットフード公正取引協議会が採用している総合栄養食の栄養基準を定めるAAFCOでは、ドライタイプのキャットフードのビタミンAの最低基準は、幼猫・成長期の猫が6668IU/kg以上、成猫期の猫が3332IU/kg以上、最大値は成長段階にかかわらず333300IU/kg以上と定められています。

妊娠期や幼猫期はビタミンAの必要量が増加するため、成猫期と比較すると幼猫期の最低基準は2倍になっています。

ビタミンAの欠乏/過剰摂取

欠乏症

  • 夜盲症
  • 眼球乾燥症
  • 網膜の変性
  • 粗毛
  • 皮膚障害
  • 脳脊髄圧上昇
  • 腎炎
  • 骨強度低下
  • 食欲不振
  • 体重減少
  • 虚弱
  • 免疫機能低下

過剰摂取

  • 骨の奇形
  • 自然骨折
  • 内出血
  • 皮膚の肥厚・角質化
  • 赤血球数減少
  • 結膜炎
  • 腸炎
  • 肝臓・腎臓機能低下
  • 食欲不振
  • 体重減少

まとめ

  • ロドプシンを構成し正常な視覚を維持
  • 皮膚や粘膜を維持し、免疫系の健康にも働きかける
  • 骨代謝を調節し、健康な骨を維持
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一般社団法人ペットフード協会ペットフード販売士、キャットフード勉強会ディレクターとして、キャットフードに関する情報を提供しています。また、日本化粧品検定協会のコスメコンシェルジュ資格を有し、ペットフードだけでなく化粧品にも精通しています。販売時に必要な知識となる薬機法などについてもご紹介ができます。 日本化粧品検定協会会員。