キャットフードの原材料:しめじ(shimeji mushrooms)
しめじとは、主に「ぶなしめじ」や「ほんしめじ」などを指すきのこの総称です。ご家庭の食事だけでなく、猫の手作りごはんにも取り入れやすい食材です。
しめじは猫にとって主食となるたんぱく源ではありませんが、ミネラルやビタミン、食物繊維、βグルカン、オルニチンなどの高栄養価を含むため、猫の健康維持・向上に効果的な食材といえます。
しめじが原材料に使用される目的
原材料欄にはしめじの他に、乾燥しめじ、しめじエキス、しめじパウダー、しめじ抽出物、しめじ由来オルニチンなどと表記されます。
βグルカンやオルニチンなどの高栄養価による健康効果だけでなく、低カロリーな食材であるため、食事のボリュームを維持しながらダイエット目的でのキャットフードやおやつに使われます。
また、風味が良いため食いつきが良くなるというメリットもあります。
しめじの栄養素と猫への健康効果
しめじの栄養素
下表は、生のしめじ100gあたりの栄養素です。
キャットフードやおやつに使用されるしめじは、一般的に乾燥処理されたものが使われているため、乾燥することで水分が抜けて栄養価が凝縮され、保存性も高まります。
しめじの栄養素 | ||
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エネルギー | 26 | kcal |
水分 | 91.1 | g |
たんぱく質 | 2.7 | g |
炭水化物 | 4.8 | g |
カリウム | 370 | mg |
ビタミンD | 0.5 | μg |
ビタミンB1 | 0.15 | mg |
ビタミンB2 | 0.17 | mg |
ナイアシン | 6.1 | mg |
ビタミンB6 | 0.09 | mg |
食物繊維 | 3.5 | g |
※出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
オルニチン
オルニチンとは猫の健康に役立つとされるアミノ酸の一種で、とくに肝機能のサポートや疲労回復に関与する成分として注目されています。
猫は肉食動物であるため植物由来の栄養素をうまく利用できず、動物性たんぱく質や脂質の代謝を主に肝臓が担っているため、常に肝臓に負担がかかりやすいです。
そのため、オルニチンが持つ解毒作用は猫の体内の有害物質を処理するうえで重要な働きをします。
オルニチンといえばシジミを思い浮かべる方が多いですが、近年の研究により、実はぶなしめじのほうがはるかに多くのオルニチンを含んでいることが明らかになっています。
具体的な含有量は、
- ぶなしめじ:779〜2,198 mg/kg
- シジミ:100〜150 mg/kg
となり、比較するとおよそ7〜14倍にもなります。
このような特性から、肝機能が気になる犬や、疲れやすい犬、運動量の多いスポーツドッグ、ストレスに敏感な犬、さらには代謝が低下している高齢犬などにとって、しめじを取り入れることは有益と考えられます。
参考:トリプル四重極LC/MS/MSを用いたきのこ(ぶなしめじ)中のオルニチン分析|堀池秀樹
腸内環境の改善
しめじは食物繊維が豊富に含まれており、腸の働きを活発にして便通を促します。とくに不溶性食物繊維は腸の中で水分を吸収して膨らみ、腸を刺激して排便をスムーズにします。また善玉菌のエサにもなり、腸内のバランスを整える助けとなります。
さらに、腸内環境の改善は免疫力の向上にもつながります。
というのも、免疫細胞の約7割は腸に集まっているため、腸内が健康であるほど免疫細胞が本来の働きを発揮しやすくなるからです。
毎日の食事や生活習慣を見直し、腸内環境を良好に保つことが、体全体の健康を支える第一歩となります。
βグルカンにより免疫力の向上
前述で、腸内環境を整えることは免疫力の向上につながることをご紹介しました。実はそれだけでなく、しめじに含まれるβグルカンそのものにも免疫力向上の効果があります。
βグルカンとはきのこや大麦などに含まれる多糖類の一種で、とくに注目されているのが免疫細胞を活性化し、体の防御力を高める作用です。
βグルカンは主にきのこ類に含まれていますが、その中でも舞茸やしいたけに次いで、しめじにも豊富に含まれています。

画像:食用きのこにおけるβ-グルカンについての一考察のデータを元にグラフを作成
しめじの与え方と注意点
加熱し、細かくカットorペースト状にする
生のしめじは消化に悪いため、猫に与えるときは必ず火を通しましょう。また、醤油やバターなどの調味料は一切使わず、そのまま調理します。
とくに猫は喉が細いため、喉を通りやすいように、また消化しやすいように細かくカットするかペースト状にするのがおすすめです。
トッピングや手作りごはんに
しめじは高栄養価でありながら低カロリーであるため、満足感を得ることができるだけでなく肥満予防やダイエットにもなります。
キャットフードにトッピングしたり、手作りごはんの食材として取り入れましょう。
初めて与えるときは少量から
しめじは食物繊維が豊富であるため、加熱が不十分であったり過剰摂取すると猫の消化器官に負担がかかり、下痢や吐き戻しの原因となる可能性があります。
またアレルギー発症の可能性もゼロではありません。猫に初めてしめじを与えるときは少量からスタートし、様子や行動に異変があらわれたらすぐに動物病院で診てもらいましょう。
まとめ
- しめじのオルニチン含有量はシジミの約7〜14倍
- 食物繊維やβグルカンにより腸内環境の改善&免疫力の向上
- 低カロリーであるため、満足感を得つつダイエット目的にも◎
- 猫に与えるときは加熱し、細かくカットもしくはペースト状にする