酵素(enzyme)とは
体内の化学反応を助けるタンパク質
酵素とは体内で必要な化学反応(代謝)を助ける物質で、タンパク質から構成されています。酵素は体内に入ると触媒として物質の化学反応を促進させ物質の変化の速度を速めます。酵素なしでは体内で行われる生命活動、特に消化、吸収、排泄が正常に行えなくなるため、酵素はあらゆる生物にとって必要不可欠な物質です。
キャットフードで酵素という言葉は聞き慣れないかもしれませんが、猫用酵素サプリメントなどの販売はよく見られます。
タンパク質がすべて酵素の働きを担うわけではなく、タンパク質によって酵素活性(触媒能力)も、働きかける成分も異なります。また酵素は加熱に弱く、熱が加わることでタンパク質の構造が変化するため、酵素としての力を失ってしまいます。
酵素が多く含まれる食べ物
酵素はフルーツ、野菜、発酵食品に豊富
酵素は生の状態のフルーツや野菜に多く含まれています。特にフルーツは酵素の宝庫とも言われていて、柑橘系全般、リンゴ、キウイ、バナナ、パイナップルなどには様々な酵素が豊富です。
生の野菜でニンジン、小松菜、ブロッコリーなどの緑黄色野菜や、大根、キュウリなどにも酵素は多く含まれます。
また、納豆や味噌、キムチ、ヨーグルト、チーズなどの発酵食品にも酵素が豊富です。発酵食品は酵素以外にも乳酸菌など腸内環境を整える菌も含まれています。
酵素の種類と働き
酵素には栄養素を分解して体が吸収しやすい形に変化させる「消化酵素」と、吸収した栄養素や成分をエネルギーに変化させる「代謝酵素」の2種類があります。一般的に酵素といえば、前者の消化酵素を指して言われることが多く、サプリメントなどに利用されるのもほとんどが消化酵素です。
アミラーゼ(デンプン分解酵素)
アミラーゼ(amylas)はデンプンの分解酵素で、デンプン中のアミロースやアミロペクチンをブドウ糖やマルトース、オリゴ糖に変換します。膵臓でつくられる酵素で、人の場合は唾液に最も多く含まれていますが、犬猫は唾液にアミラーゼは含まれていません。
大根、キャベツ、山芋、カブ、バナナ、生姜、キウイ、梨などに多く含まれています。酵素は全体的に熱に弱いですが、アミラーゼは比較的熱に強い種類も存在します。
プロアテーゼ(タンパク質分解酵素)
プロアテーゼ(protease)はタンパク質の分解酵素で、アミノ酸への分解、栄養の吸収やタンパク質の廃棄や再生、生体防御、活性の調節などを行っています。
舞茸やパイナップル、パパイヤ、キウイ、イチジク、納豆に多く含まれます。プロアテーゼにも様々な種類があり、たとえば納豆に含まれるプロアテーゼは「ナットウキナーゼ」という種類のプロアテーゼになります。
リパーゼ(脂質分解酵素)
リパーゼ(lipase)は脂質の分解酵素で、中性脂肪を分解します。生体内では膵臓で合成される物質で、膵液や胃液、腸液に含まれています。
大根やトウモロコシなどに多く含まれますが、熱に弱く活性を失いやすい種類が多いです。
キャットフードに唯一添加できないのが酵素
キャットフードで唯一必要な量を加えるのが難しいと言われているのが「酵素」です。
酵素は様々な食べ物に含まれているものの、説明にもあるように熱に弱い種類が多く、ドライフードもウェットフードもペットフードとして加工するにあたり、製造過程で加熱が行われるため、原材料に含まれる酵素の多くは失われてしまいます。
このため、鮮度が高い生の食材や発酵食品を使用できる手作り食は酵素の摂取に効果的と言われています。毎日の手作り食でなくとも、おやつとしてたまに生の野菜やフルーツを与えてもいいかと思います。
また、キャットフードでは摂取できない酵素を補うための猫用サプリメントも販売されています。
酵母と酵素の違い
酵素と似たような名前のため、混合して考えられがちなのが酵母です。
酵母はパンの発酵に利用されるイースト菌やビールのアルコールをつくり出すビール酵母などがあり、キャットフードにも利用されることがありますが、酵母は微生物であり菌類のため、酵素とは実際まったく別物になります。
まとめ
- 酵素とは体内で化学反応を助けるタンパク質
- 酵素は生のフルーツや野菜に多く含まれる
- 熱に弱くキャットフードに配合するのは難しい