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高齢猫の8割以上が患う慢性腎臓病
徐々に腎機能が低下
腎臓病(Kidney Disease)は徐々に腎臓機能が低下する病気で、高齢猫の8割以上が患っているとも言われています。
腎臓は使われ続ける中で加齢とともに機能が落ちてきてしまうため「すり減る」という言い方は正しくないかもしれませんが、一度機能が落ちると、そこからは進行速度を遅らせることはできても回復や完治させることはできません。
猫の腎臓病の進行ステージと症状
慢性腎臓病の進行度合いを表す進行ステージの境界線は曖昧ですが、初期段階のステージ1から最も深刻なステージ4に分けられています。
ステージ1
正常~ステージ1では腎臓の半分程度は機能しており、目立った症状はありません。猫も普段通りに過ごすことができるので、この時点では薬などを使って治療も行うことはなく、普段の生活の中でステージ2に進行しないよう食事や水分摂取量に配慮します。
ステージ2、3
ステージ2、3になると腎機能の15%~30%弱でしか機能しなくなり多飲多尿などの症状が見られます。いきなり自主的に水をたくさん飲むようになったら慢性腎臓病を疑った方がいいかもしれません。
ステージ2、3ではタンパク質やリン、ナトリウムを制限した療法食を与えるよう獣医師から指示されることが多いです。
ステージ4(腎不全、尿毒症)
ステージ4は最も進行した段階で、よく聞かれる「腎不全」の状態です。多飲多尿に加え食欲不振や体重減少、下痢や嘔吐なども症状として見られます。
ステージ4になるとほとんど腎臓としての役割を果たせず老廃物などを体外に排泄できなくなるため「尿毒症」も併発している可能性が高いです。治療は投薬による対症療法や食事療法になります。
猫が慢性腎臓病にかかりやすい理由
猫は尿を節約している
腎臓には体内の血液中に存在する老廃物や不要な成分、水分などを尿として排泄する機能がありますが、水の少ない砂漠地帯にいた猫にとっては、貴重な水分を簡単に体の外に出すわけにはいきません。
このため猫は、できるだけ少ない尿量と排泄回数で老廃物や不要な成分を出せるよう、尿を腎臓で濃縮しています。
尿の濃縮で腎臓に負担がかかっている
「尿が少ないなら腎臓に負担がかからないのでは?」とも思えますが、腎臓には必要なものは残し不要なものだけを排泄するフィルターのような働きもあります。
何度も何度も老廃物や余分の成分が濃縮されることで、通常の尿をつくるよりも猫の腎臓には大きな負担がかかっています。
猫の慢性腎臓病の予防には水分摂取が重要
慢性腎臓病では、尿が濃くならないよう猫の水分摂取量を増やすことで、腎臓への負担を軽くすることができます。砂漠に住んでいた昔ならともかく、現代の日本なら飲み水を用意するのは簡単なことです。
ところが飼い猫になった今でも猫は水を積極的に飲まない子が多く、たとえ喉が渇いていても、めんどくさがって飲まない、好みの味や温度でないから飲まない、などの理由でも水を飲まない猫も多いです。
このため水を飲ませることが大切なのは分かっていても、十分な水を飲ませられないことに悩む飼い主さんも多くいらっしゃいます。
猫の水分補給にはウェットフードがおすすめ
ウェットフードの水分は80%以上
そんな猫の腎臓病予防に効果的と言われているのがウェットフードです。普段、猫にドライフードのみを与えている方も多いですが、ウェットフードには水分が80%以上含まれていて、猫の嗜好性も高いため、飲水量自体を増やすよりも簡単に水分摂取量が増やせます。
併用の方が慢性腎臓病になりにくい?
実際、2020年に動物医療センターで行われた慢性腎臓病と診断された猫の飼い主へのアンケートからも、ドライフードのみを与えた猫よりウェットフードも併用して与えた猫の方が慢性腎臓病になりにくい傾向が見られたそうです。
また、総合的な水分摂取量を見ると、ウェットフードを食べている猫の方が全体的に摂取できている水分量が多い結果となりました。ドライフードは一見猫の飲水量が増えたように見えますが、水分は10%程度しか含まれないので、食事と飲水量を合わせた量ではウェットフードの方が実際は多くの水分を摂取できています。
すべての食事をコストの高いウェットフードにする必要はありませんが、おやつやおかず、手作り食などで上手に利用することで、猫に十分な水分補給をさせてあげられるかと思います。
まとめ
- 高齢猫に最も多い病気
- 猫は腎臓に負荷がかかりやすい動物
- 進行は遅らせても完治は不可
- 原因は慢性的な水分摂取量の不足が有力
- 予防にはウェットフードの併用がおすすめ