

そうですね。原材料に含まれる栄養素には猫の体やキャットフードに必要な特徴や役割があります。
ここではキャットフードの原材料それぞれの特徴や働き、配合する目的を紹介したいと思います。
キャットフードで使用される原材料の種類
肉類・魚類


キャットフードにはほぼ必ず使用される肉類・魚類の原材料はキャットフードの栄養素の割合や、商品の方向性、味や風味を決める重要な原材料です。主原料(第一・第二原料)として原材料上段に表示されることが多く、キャットフードのおよそ20~80%を占めています。
肉や魚に豊富な動物性タンパク質は、筋肉や皮膚・被毛など体を構成する役割の他、主要なエネルギー源としても利用されます。
また、猫は植物原料から必要な栄養素を合成するのが苦手なので、猫の必須アミノ酸や必須脂肪酸、脂溶性ビタミンが消化吸収しやすい状態で含まれる肉や魚は猫にとって重要な栄養供給源です。


キャットフードでは特にチキンが人気です。高タンパクで低脂質かつ味にクセがないので猫の好き嫌いも少ないためかもしれません。
アレルギー対策にはラムやターキー、白身魚などがよく見られます。また、国産ウェットフードにはツナ(マグロやカツオ)がよく使用されています。
動物や魚からとれる鶏脂、サーモンオイル、魚油、レバーなども動物由来の原材料としてはよく使用されます。
穀類


一昔前まではキャットフードのメイン原材料として多く配合されていた穀物。ここ最近は穀物を不使用にしたグレインフリーフードが主流になってきていますが、炭水化物(糖質、食物繊維)だけでなく、植物性タンパク質やモリブデン、パントテン酸、マグネシウム、ビタミンB群など様々な栄養素が含まれています。
ただ肉と魚の項目でも説明したとおり、猫にとって主要なエネルギー源となるのは炭水化物ではなくタンパク質なので、穀類は必要ないという見解もあります。実際、猫は炭水化物の約40%程しか消化できないので、多すぎる食物繊維は消化不良の原因になることもあります。また肉や魚が多い製品に比べると嗜好性も低い傾向があります。
アレルギーの面からも、小麦やトウモロコシに含まれるグルテンは穀物アレルギーや食物不耐症の原因となるため、穀物を不使用にしたグレインフリーが指示されています。


そうですね。ただ、穀物が全て猫にとって良くないというわけではなく、中にはグルテン含まない米やオートミール、玄米などの穀類を使用しながら猫の体や栄養面に配慮したフードもありますし、穀物と相性の良い猫もいるので、愛猫の体質や嗜好性に合わせて選ぶことが大切です。
野菜類


野菜類には食物繊維やまたビタミンやミネラルが豊富です。このため、キャットフードに様々な野菜を使用することで、食材から天然の栄養素を取り入れることができます。ただ野菜に含まれるビタミンの多くは加熱や製造過程、また保存中に損失してしまうものが多いので、中には野菜にまったく頼らず、栄養添加物や他の原材料でビタミンやミネラルを補っているものもあります。
また、使用される野菜はその原産国の特色が出ることが多く、海外産ではあまり日本では馴染みのないチコリやなどがよく配合されていますが、国産ではキャベツや人参、ゴボウなど日本のスーパーで販売されているような食材が見られます。
ただ野菜は基本的に水分量が多いので、乾燥させるドライフードではそこまで高い割合にはなりません。


野菜の中でも、ジャガイモやサツマイモは食物繊維が多く腹持ちが良いため、野菜というより穀物の代わりに炭水化物や食物繊維源として配合されることが多いです。
猫も40%は炭水化物を消化できるので、腹持ちを良くしつつサブのエネルギー源となります。
豆類


豆類は食物繊維が豊富かつ低GIでアレルギーのリスクも低い炭水化物源です。芋類と同様、グレインフリーキャットフードで使用されることが多く、エンドウ豆、ヒヨコ豆、レンズ豆、大豆など様々な豆類がキャットフードに使用されています。
豆類の中で、大豆だけは少し扱いが異なります。大豆は植物性タンパク質が豊富で、肉や魚に匹敵するほどです。おから、きなこ、大豆油など大豆から加工した原材料も多く使用されています。栄養価が高く、イソフラボンというポリフェノールも多く含まれています。また大豆からつくられる納豆菌にはプロバイオティクスとして腸内環境を整える働きがあります。
一点、豆類の中で大豆だけはアレルギーのリスクが高いとされてるので、大豆を不使用にするメーカーも多いです。また、大豆には植物性タンパク質が豊富ですが、猫にとってエネルギーとして効率的に活用しやすいのは動物性タンパク質です。なので、大豆が含まれる場合、動物性タンパク質と植物性タンパク質がどの程度の割合で配合されているかは気になるところかもしれません。

肥満や血糖値が気になる猫には低GIな豆類は嬉しいですね。大豆だけはメリットも大きいけどアレルギーのリスクもあるという感じなんですね。
果物類


果物類(フルーツ)はビタミンや食物繊維が豊富で、甘味や酸味など味を構成する成分も多く含まれています。また、生の果物には抗酸化成分やポリフェノール、酵素なども豊富に含まれます。特に抗酸化作用があり、腸内環境を整え免疫力を高めたり、尿pHを酸性に傾けるベリー系の果物は下部尿路疾患に配慮したキャットフードによく使用されます。
ただ果物をドライフードに使用する場合、どうしても加熱加工が加わるので、熱に弱いビタミンや酵素などは損失してしまいます。このため、果物は配合しないキャットフードも多く見られます。また、果物を配合すると糖質が多くなってしまうだけでなく、猫は犬のように甘味に対して嗜好性を示さないので、使用するとしても少量であることがほとんどです。

ストルバイト結石は尿pH値がアルカリ性に傾くと形成されやすくなるので、酸性に傾けてくれるベリーはよく見ますね。
猫は甘くても食いつきがよくなるわけではないんですね。
ハーブ類


ハーブ類は種類にとって様々な効能や作用が期待されていて、また猫の体への働きだけでなくキャットフードの品質保持の面においても役に立つ原材料です。配合量は多くありませんが、合成添加物等を使用せず天然原材料のみで構成されたキャットフードでは、ハーブの効果や作用も上手に使って品質を維持しています。
ハーブの効果は、ざっと抗酸化作用や防腐作用、消臭作用、殺菌作用を始め、他にも安眠効果、血流改善、消炎作用、利尿作用、消化促進、肝機能を高めるなど、猫の健康維持にも嬉しい作用が期待されています。
添加物


よく話題に上がる添加物。キャットフードでは酸化防止剤や保存料、甘味料、着色料、香料、調味料、栄養添加物などが使用されています。
添加物はそれぞれに目的があって配合されるので一概に悪いものばかりではなく、キャットフードの劣化や腐敗を防いだり、必要な栄養素の確保のために配合されていることがほとんどです。添加物にも化学由来のものもあれば、天然由来のものもあるので、原材料名欄を見て判断する必要があります。


いえ、「無添加」と言われるキャットフードも、実は明確な定義がないので、栄養添加物は使用されていたり、製造過程で記載義務のない添加物が使用されている可能性があります。このため無添加という言葉にどれくらいの信憑性があるかは定かではありません。
また本当に完全無添加でキャットフードを製造した場合、酸化や腐敗が進むので、発癌性物質の発生や食中毒、風味や嗜好性を引き起こし、添加物を使用する時よりかえってひどいことになる場合もあるんです。
このため、キャットフードでは添加物すべてを敵視するのではなく、猫に注意が必要な害の可能性のある添加物を知って避けることが大切です。
その他の機能性原材料

ビール酵母やプロバイオティクス(乳酸菌など)、オリゴ糖、ビートパルプ、セルロースなど、どの分類にも振り分けられない原材料もあります。
原材料によって様々な目的がありますが、上記のものは主に食物繊維や腸内の環境を整えるために加えられる原材料です。
キャットフードの原材料の見方

キャットフードのパッケージには使用されている全原材料名が表示されています。
日本で販売されているペットフードは「ペットフード安全法(愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律)」によって、名称、原材料名、賞味期限、事業者名および住所、原産国の5項目の表示義務が定められています。このため、パッケージには必ず原材料が表示されています 。
原材料名欄は、割合の多い順番に記載されているので、下の例ではチキンが主原料となります。配合が1%以下の原材料は順不同なので、最後の方に記載されている原材料は配合量順とは限りません。

危険な原材料や添加物は禁止、もしくは制限が設けられている

ペットフード安全法では表示の他、有害な物質や添加物の使用を禁止・または制限しています。
以下、ペットフード安全法で規定されている物質や添加物になります。
分類 | 規定される物質名 | 規格 |
---|---|---|
カビ毒 | アフラトキシンB1 | 0.02μg/g |
デオキシニバレノール | 1μg/g | |
有機リン系農薬 | グリホサート | 15μg/g |
クロルピリホスメチル | 10μg/g | |
ピリミホスメチル | 2μg/g | |
マラチオン | 10μg/g | |
メタミドホス | 0.2μg/g |
|
添加物 | エトキシキン | 150 g/t |
BHT (ジブチルヒドロキシトルエン) | ||
BHA(ブチルヒドロキシアニソール) | ||
亜硝酸ナトリウム | 100 g/t | |
重金属 | カドミウム | 1μg/g |
鉛 | 3μg/g | |
砒素 | 15μg/g | |
有機塩素系農薬 | BHC(α-BHC、β-BHC、γ-BHC、δ-BHCの総和) | 0.01μg/g |
DDT(DDD、DDEを含む) | 0.1μg/g | |
アルドリン及びディルドリン | 0.01μg/g | |
エンドリン | 0.01μg/g | |
ヘプタクロル及びヘプタクロルエポキシド | 0.01μg/g | |
メラミン | 2.5μg/g |




食糧には限りがあり、動物と人間にとって美味しい部位や必要な部位はまったく同じではありません。このため、共生の上で、人間が食べる部分と動物に与える部分を分けることは、動物と人間、両方の食糧を確保できるので、一概に悪いことではありません。
ですが中には「食品には規定で使用できないから、決まりが少なく配合してもバレない動物用に…」と安いコストでその原料が使用される場合もあります。これはもちろん原産国やメーカーの方針や考え方によっても異なりますが、飼い主さんが原材料や製造メーカーから判断することが大切です。
キャットフードの原材料まとめ

以上キャットフードの原材料を分類して紹介しました。キャットフードには、様々な原材料がそれぞれ目的をもって配合されています。
愛猫のためにどんな原材料を使用したキャットフードを選べばいいのか少しでも参考にしてもらえたら幸いです。下の記事ではキャットフードの成分についてご紹介しています!ぜひ合わせてご覧下さい。